ESG のデータと報告に関する Microsoft Cloud for Sustainability の新機能の紹介
※本ブログは、米国時間 2023 年 6 月 15 日に公開された New ESG reporting capabilities with Microsoft Cloud for Sustainability – Microsoft Industry Blogs (英語) の翻訳です。
組織の CSRD 対応準備を強力に支援するツールが新たに登場します。
マイクロソフトは、この 1 年で数多くの進化を遂げてきた Microsoft Cloud for Sustainability の強力な新機能を発表します。現在欧州連合の CSRD (企業サステナビリティ報告指令) など、各種の ESG (環境、社会、ガバナンス) 報告規制の開始が予想されていますが、これらの新機能によって組織はより多くの ESG データを収集、管理できるようになります。まず、Cloud for Sustainability のソリューションである Microsoft Sustainability Manager が拡張され、組織が環境に及ぼす影響を炭素、水、廃棄物のすべてにわたってより詳細に可視化できるようになる予定です。さらに、包括的な ESG データ資産の作成と、新たな報告要件への対応準備を支援する新機能の提供が予定されています。
この記事では、これらの最新機能について紹介します。また、マイクロソフトの最高サステナビリティ責任者 Melanie Nakagawa とサステナビリティ分野の重要人物が、組織の規制対応を支援する最新の技術イノベーションについて議論するセッションもぜひご覧ください。開催は 2023 年 6 月 15 日 10:00 (太平洋時間) を予定しており、その後はオンデマンドでご覧いただけます。
この 1 年間の Microsoft Cloud for Sustainability の進化については、こちらをご覧ください。
Project ESG Lake (プレビュー) で洞察の獲得を迅速化
現在、世界中の組織がデータ適用とデータ分析の新たな手法を模索しています。その背景には、新しい ESG 報告規則やベスト プラクティスの遵守に対する市場とステークホルダーからのプレッシャーや、生成系 AI を活用した体験のニーズが高まり続けている現状があります。オペレーションとバリュー チェーン全体にわたってリスクを予測し、サステナビリティの問題を測定し管理するためには、相互に分断した複雑な一連のデータ ソースとデータ サービスを連携させ、サステナビリティ データ、オペレーション データ、財務データを詳細に分析できる能力が必要です。
その結果として、数多くの企業がデータ管理システムを見直し、自社の柱となるビジネス モデルやビジネス オペレーションにサステナビリティを取り入れています。この取り組みは、まずデータ資産を整理することから始まります。ここでは、データの収集、集約、標準化、分析、監査活動支援を目的としたデータ ソースの追跡などが行われます。
本日マイクロソフトが発表する Project ESG Lake は、より適切なデータの管理と準備による包括的な分析を可能にし、組織のサステナビリティ目標の達成に向けた取り組みを支援するソリューションです。
Project ESG Lake は、炭素、水、廃棄物、社会、ガバナンス、生物多様性、一般ビジネス分野に対応した 400 以上のテーブルを備えた、広範な ESG データ モデルを提供します。これらのデータ モデルを使用してさまざまな事業部門とサプライ チェーンのデータを一元化し、高度な分析と報告に対応した標準スキーマに変換することで、包括的なデータ資産を構築できるようになります。ビジネス全体にわたるさまざまな活動が今まで以上に可視化されることで、意思決定者は ESG と業績の両方を改善しつつ、長期的な競争力を強化できます。
Project ESG Lake があれば、さまざまなソース システムの ESG データを集約し、単一の ESG データ モデルで標準化し、ESG データ資産を構築して、一元管理できるようになります。
Project ESG Lake ソリューションは以下のようなアイデアを可能にします。
- Project ESG Lake で提供されるデータ統合および変換フレームワークを活用して、Microsoft Sustainability Manager やその他のサードパーティ ソリューションの計算済み排出量データを ESG データ資産に取り込む。
- (Microsoft Azure や Microsoft 365 の使用に伴う) マイクロソフト関連での排出量を ESG データ資産に統合する。これらのデータを Project ESG Lake の変換フレームワークを使用して変換し、ESG 分析データ モデルで標準化することで、分析や報告の業務に対応させることができます。
- 生物多様性、気候リスク、エネルギー、ESG など多種多様なサステナビリティ カテゴリのデータを、Project ESG Lake で提供される外部データ セットを使用してエンリッチする。
- Project ESG Lake で標準化された ESG データを Microsoft Fabric で活用する。Microsoft Fabric とは、データに対する 生成系 AI の適用 (開発者) とデータに基づく有意義な洞察の抽出 (ビジネス ユーザー) を可能にする、エンドツーエンドの統合型分析プラットフォームです。Microsoft Fabric を使用することで、Project ESG Lake が提供するソリューションやサービスのアクセス、デプロイ、コンピューティングを行うことができます。
- Project ESG Lake で集約され標準化された ESG データを、ESG データ モデルに沿った Power BI の一連のレポート テンプレートに接続する。これにより、ESG のカテゴリの分析と報告に要する時間を短縮し、該当する指標を Power BI で視覚化できるようになります。Power BI のレポートおよび視覚化機能をカスタマイズすることで、実際の報告業務で必要とされる具体的な指標や目標に注目させることができます。
環境、社会、ガバナンスに関するさまざまなソースシステムのデータを Project ESG Lake で統合、標準化することで、一元管理可能な単一の ESG データ資産を構築。
強化された ESG 報告機能で、万全の準備で規制に臨む
これから予定されているさまざまな規制に備えるためには、現在のコンプライアンス態勢を把握し、必要な活動を追跡して、規制に対応した証拠を文書化する必要があります。また、監査や報告に備えてデータ ガバナンス手法を強化する必要もあります。マイクロソフトでは、用途を絞り込んだ機能を続々と提供することで、このようなニーズに対応しています。最終的には、主要な ESG 規制の報告基準やワークフローに対応する、事前構築済みの ESG 報告テンプレート セットの提供を予定しています。
Microsoft Purview コンプライアンスマネージャーの CSRD テンプレート: 2023 年 7 月以降、CSRD への準拠に必要な項目をお客様が把握できるようになります。これらの項目は ESRS (欧州サステナビリティ報告基準) の暫定版に従って規定され、ESRS 規制の最終版は 2023 年後半に決定される予定です。このテンプレートを使用することで、ESRS 報告に必要なデータの収集を開始することができます。このテンプレートは新たな基準が採用されるたびに更新されます。
Microsoft Purview コンプライアンスマネージャーの CSRD テンプレート。
目標と報告の整合性を確保: 2023 年 7 月には Microsoft Sustainability Manager の新機能の公開も予定されています。これらの新機能を使用することで、排出量、水、廃棄物の定量的データを ESRS 規制の暫定版に従って収集し、SBTi (科学に基づく目標設定イニシアチブ) の目標達成の進捗を追跡できるようになります1。
二酸化炭素排出量全体を把握できる、包括的な排出量データ管理機能
排出量の影響をすべて漏れなく把握するには、オペレーションとサプライ チェーンにおけるすべてのカテゴリの排出量データを収集し、管理する必要があります。Microsoft Sustainability Manager では、スコープ 3 の 15 カテゴリすべての保存、計算、報告を可能にするスコープ 3 排出量計算モデルが、現在最終ラウンドを迎えています (2023 年 6 月時点でプレビュー)。スコープ 1 および 2 については、2022 年 6 月の一般提供開始以来サポートしています。
スコープ 3 の 15 の排出量カテゴリすべてに対応する、Microsoft Sustainability Manager のスコープ 3 排出量データ管理機能。
販売した製品の加工に関連する排出量 – スコープ 3 カテゴリ 10 (プレビュー): 販売した製品の加工が環境に大きな影響を与える場合があります。これは、加熱、冷却、冷凍など、大量のエネルギーを消費する作業を加工工程で行うことが多い業界に顕著です。スコープ 3 カテゴリ 10 に対応した組織は、このような加工に関連する排出量を計算し、環境影響を低減できる領域を特定して、より持続可能性に優れた手段の実践に取り組めるようになります。こうした取り組みには、最終消費者が使用する前段階で、報告企業が販売した中間製品を第三者の製造業者が加工することによって生じる間接排出量を低減することが含まれます。
販売した製品の使用に関連する排出量 – スコープ 3 カテゴリ 11 (プレビュー): 販売した製品の使用に関連する直接排出量と間接排出量をスコープ 3 カテゴリ 11 で計算することで、気候関連の潜在的リスク、低炭素製品の開発がもたらす競争優位性、排出量削減に向けたサプライヤーとの連携がもたらす競争優位性を特定することができます。
フランチャイズ事業からの排出量 – スコープ 3 カテゴリ 14 (プレビュー): フランチャイズ事業による間接排出量を含む排出量をスコープ 3 カテゴリ 14 で計算することで、サプライチェーンの持続可能性を改善できる領域や、あらゆる拠点にコスト削減をもたらす機会を特定することができます。フランチャイズの排出量を管理することは、ブランドに対する評価の向上、顧客ロイヤルティの改善、規制コンプライアンスの強化、加盟店の獲得と維持につながります。
投資に関連する排出量 – スコープ 3 カテゴリ 15 (プレビュー): 主に金融機関によって報告されるスコープ 3 カテゴリ 15 の排出量とは、それらの金融機関による投資によって生じる排出量のことです。金融機関にとって投資は必須の活動であるものの、複数の外部ソースのデータ収集や高度な配賦法の使用を伴うため、その計算は非常に複雑になります。Microsoft Sustainability Manager では、信頼性に優れた手法によってこのプロセスを加速することができます。この手法は、金融機関に直接適用することはもちろん、金融機関の具体的なニーズに合わせてカスタマイズできます。
燃料とエネルギーからのその他の排出量 – スコープ 3 カテゴリ 3 (プレビュー): サプライヤー関連の活動で生じる排出量や、購入済みエネルギーの輸送や流通に伴って失われる排出量など、バリュー チェーンにおける燃料やエネルギーに関連する排出量の計算は、近い将来ほとんどの組織に義務付けられる見込みです。スコープ 3 カテゴリ 3 に対応することで、スコープ 1 およびスコープ 2 の燃料とエネルギー関連カテゴリでの計算手法を簡単に利用できます (スコープ 3 カテゴリ 3 の場合、バリュー チェーンが追加要素として考慮されます)。また報告にあたっては、このカテゴリの排出量が適切なスコープに対応付けられます。これには、スコープ 2 の購入済みエネルギーの輸送や流通に伴って失われるエネルギーや、スコープ 1 と 2 が対応していないその他の公益事業会社や燃料に関する情報が含まれます。
柔軟な温室効果ガス地球温暖化係数評価 (プレビュー)
温室効果ガス (GHG) 地球温暖化係数 (GWP) 評価の既定のレポート セット (評価レポート 4、5、6 を含む) を選択し、すべての計算で使用できます。これにより、より正確な計算結果を生成して報告やコンプライアンスの質を全体的に改善することができます。この場合でも、これらのセットは必要に応じて計算プロファイル内で別のセットにカスタマイズできます。
廃棄物サステナビリティのデータ ビューを一元化する廃棄物データ機能
Microsoft Sustainability Manager の廃棄物データ取り込み機能 (プレビュー): 組織には、廃棄物の量と質に関するデータがさまざまなソースから数多く取得されますが、これらのデータ入力を効率化して廃棄物サステナビリティのユース ケースに備える必要があります。この機能を使用することで、新規入力された廃棄物データや過去に入力した廃棄物データを、Microsoft Sustainability Manager に入力済みの、該当する廃棄物の分類データや参照データと関連付けられるようになります。廃棄物データ入力フォームを利用することで、公益事業会社の請求書やメール、紙ベースのラボ試験レポートなど、デジタル化されていないデータ ソースを計算に反映させることが可能になります。
Microsoft Sustainability Manager の廃棄物データ管理。
Microsoft Sustainability Manager ダッシュボードの廃棄物量データ視覚化機能 (プレビュー): 正確な洞察に基づく正確な報告を行うためには、詳細かつ最新の廃棄物量データが必要です。この機能を使用することで、廃棄物量に関する最新の履歴データを視覚化し、時間、廃棄物の種類、材料の粒度に基づくデータのフィルタリング、ロールアップ、ドリルダウンを、施設単位あるいは組織単位で行えるようになります。
Microsoft Sustainability Manager の廃棄物量データ視覚化機能。
標準レポートによる廃棄物サステナビリティ情報開示機能 (プレビュー): 自社の廃棄物サステナビリティ目標の達成に取り組んでいる組織や、外部の廃棄物報告要件を満たす必要がある組織が、規制対象廃棄物に関するサステナビリティ レポートやカスタム レポートを Microsoft Sustainability Manager で生成し、廃棄物量に関する定期データを開示できるようになりました。
Microsoft Sustainability Manager の廃棄物データ情報開示機能。
水のサステナビリティ実現を加速する、新しい水データ機能
水収益原単位の計算機能 (プレビュー): 全体的な収益に基づく水の使用効率を理解し、外部の報告要件に対応する必要がある組織が、Microsoft Sustainability Manager を使用して組織全体の純収益あたりの総水消費量 (立方メートル) を計算し、報告できるようになります。
水収益原単位レポート。
貯水量の追跡機能 (プレビュー): 流出および流入する大量の水を貯蔵している組織が、合計貯水量と貯水容積の変化を報告し、外部報告要件に対応できるようになります。水の消費量がマイナス値の場合、施設や組織が生態系に水を補充しているかどうかを把握できます。
Microsoft Sustainability Manager の貯水量追跡機能。
水サステナビリティ目標の追跡機能 (プレビュー): 組織の水使用のシナリオの多くが複雑化しており、水サステナビリティの目標達成をより難しくしています。Microsoft Sustainability Manager は、1 つひとつの施設から組織全体に至る水サステナビリティの目標策定と追跡を支援し、この複雑性の解消に貢献します。
Microsoft Sustainability Manager の水量目標設定機能。
Azure と Microsoft 365 の使用に伴う排出量のデータ レイクへのエクスポート機能 (プレビュー): Microsoft Cloud for Sustainability API (プレビュー) ポータルを使用して、Azure と Microsoft 365 の使用に伴う現在および過去の排出量を Azure Data Lake Storage に直接エクスポートできるようになりました。Azure と Microsoft 365 の使用に関連する排出量を Azure テナントで直接集計できるようになるため、分析と報告の作業が効率化されます。さらにこの新機能は、マイクロソフトやサードパーティのデータ管理ツールやビジネス インテリジェンス ツールへのデータ接続にも柔軟に対応します。
サステナビリティの実現を加速する、その他のリソースの活用方法
ニュースと最新情報を入手する。さまざまな規制が登場し強化される中、マイクロソフトでは ESG の追跡と報告に関するイノベーションを迅速に提供しています。マイクロソフトの最新情報をメールで入手するには、ぜひご登録ください。
Microsoft Cloud for Sustainability コミュニティ ポータルでつながりを深める (近日公開予定)。お客様とパートナーの両方が集まる活発なコミュニティに参加し、つながりと知識を深めましょう。新しい Microsoft Cloud for Sustainability ポータルは、質問に対する回答の共有と検索、貴重なリソースの探索、機能リクエストやトラック更新を含む製品フィードバックの送信、ユーザー グループやフォーラムへの参加と興味分野に関する議論など、さまざまな操作と活動の拠点です。
Microsoft Cloud for Sustainability コミュニティポータル (近日公開予定)。
2023 年 7 月に予定されているサステナビリティ関連 Tech Talk で理解を深める。Tech Talk は、マイクロソフトの業界向けソリューションについて知識を深める絶好の機会です。このディスカッションは毎月 1 回開催され、現場指向の姿勢を重視し、エキスパートの案内で進められます。マイクロソフトの技術を支える人々に出会い、リアルタイムの製品デモでハイレベルなコンセプトを理解することができます。毎回のトークの締めくくりには、知識の振り返りを行い、いくつかの教訓をまとめ、推奨されるアクションが紹介されます。Tech Talk では、実際のお客様が抱える疑問を出発点に、価値創出までの期間短縮を支援します。マイクロソフト側でも技術に調整を加えるため、お客様によりよい体験を提供することができます。詳しくは今後の発表をお待ちください。
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サステナビリティの取り組みを加速
Microsoft Cloud for Sustainability は、お客様のオペレーションとコストの効率化を支援し、サステナビリティ目標の達成に貢献します。
1 SBTi は、企業向けの各種ガイドラインと基準を提供し、気候科学とパリ協定の目標に沿った排出量削減目標の策定を支援する、カーボンディスクロージャープロジェクト、国連グローバルコンパクト、世界資源研究所、世界自然保護基金の共同プロジェクトです。詳しくはこちらを参照してください。