スマーター・リテイリング・フォーラム 2024 Retail Unlocked 〜 AI で解放するリテールのポテンシャル
※各セッションのオンデマンド配信一覧はこちら
スマーター・リテイリング・フォーラムは、流通業におけるユーザー企業と IT ベンダー企業の協業による IT 技術の標準化推進を活動目的として、2004 年に設立されたオープン フォーラムです。(スマーター・リテイリング・フォーラムについて )2024 年 2 月末時点で国内約 500 社の企業が参加する大規模なフォーラムであり、POS システムのインターフェイスを定義する OPOS 仕様、データやアプリケーションのインターフェースの標準化など、さまざまな仕様の検討を行っています。
2024 年 3 月 13 日(水)に日本マイクロソフト主幹で開催された「スマーター・リテイリング・フォーラム 2024」(以下 SRF 2024)では、「Retail unlocked 〜 AI で解放するリテールのポテンシャル」という副題に相応しく、小売業界において世界的に活用が拡大している AI を大きなテーマとして、Microsoft が提供する AI ソリューションの紹介と「Retail unlocked」を体現する企業・ソリューションの事例紹介が行われました。その模様はオンデマンド配信にてご覧いただけます。
本稿では、日本マイクロソフト 流通サービス営業統括本部 藤井 創一によるセッションや、イオン、セブン&アイ・ホールディングスといった小売業界を代表する企業のキーパーソンを招いての DX 推進、AI 活用にまつわるセッション、OPOS 技術協議会および .NET 流通システム協議会からの活動報告など、SRF 2024 で語られた内容の一部をご紹介します。興味を持たれた方は、ぜひオンデマインド配信をご視聴ください。
「生成 AI と小売業の未来」
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
常務執行役員 最高情報責任者(CIO)兼 グループ DX 本部長
齋藤 正記 氏
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長
河上 久子
このセッションは、齋藤氏によるセブン&アイ・ホールディングスの生成 AI 活用の現在地に関する講演と、齋藤氏と日本マイクロソフトの河上によるトークセッションに分けて展開されました。
齋藤氏によると同社は、「生成 AI ファースト」を合言葉に、生成 AI の有効活用による DX の加速を推進。生成 AI の理解と体得を目指す AI の概論研修とプロンプトデザイン研修を開催し、2024 年度中に経営陣からミドルマネジメント、ひいては全社員を対象として裾野を広げていく計画です。
それに先んじて開催された選抜メンバーによる生成 AI プロンプトデザインワークショップを示しながら齋藤氏は、「新しいものに取り組む様子はとても楽しそう。こういった活動を徐々に広めていきたい」と語ります。
また同社では、既存、新規を問わず「生成 AI を使ってみたらどんな効果があるか」を見極める取り組みを実践。すでに、会員向けメール配信の最適化や英語文書の表現統一など、いくつかの検証プロジェクトを進めているといいます。齋藤氏は店舗の課題抽出とその解決方法の提案への活用施策として、質問を投げかけると生成 AI が店舗データから分析結果や関連情報を踏まえて回答を返してくれるシステムを紹介。解決のためのアクションも生成 AI に尋ねることができ、売り場改善につなげることが可能です。
齋藤氏によれば、生成 AI の最大の特徴は、高い IT リテラシーを持たない人材も DX の担い手になれる点。「生成 AI がもたらす革新は、現場の人々が当たり前に生成 AI を活用することにより実現できるはず。そしてその実用例は産業や業種の垣根を超えて共有、連携すべき」であり、こうした流れこそが、生成 AI の活用による DX とその先にある流通革新の実現につながる、と訴えかけました。
ここで河上が登壇。生成 AI を積極的に活用している企業とそうでない企業との間にギャップが生まれてきている我が国の小売業界の状況に対して、齋藤氏にセブン&アイ・ホールディングスにおけるこの 1 年間の取り組みや導入への壁について問いかけました。齋藤氏によると、セキュリティを不安視してアクションしないという選択をするのではなく、セキュリティを担保しつつ生成 AI を活用していくことを選択したとのこと。その背景には「生成 AI を活用しないと世の中から置いていかれるかもしれない」という強烈な危機感があったといいます。DX 担当部門が生成 AI の活用環境を整備し、アイデアを示すことで経営層の理解を得ていったそうです。
今後セブン&アイ・ホールディングスでは、AI アシスタントを導入してノウハウやナレッジを蓄積させていく予定ですが、齋藤氏は「基本的な概念を学習したうえでないと普及は難しい」と、慎重な導入・運用の必要性を強調。河上も「ツールだけ配っても使ってもらえなければ意味がありません。人材育成を並行して進める点は非常に参考になると感じました」と同意します。
また齋藤氏は、「効果の実感しやすい業務改善に目が行きがちだが、生成 AI は顧客体験など新たな価値を生み出す部分でこそ効果を発揮するはず」と、最終的な目標として外向けの価値創造を見据えながらも、まずは裾野を広げることが大切である点を示唆しました。
そして最後に齋藤氏は、生成 AI の進化スピードは非常に速く、数ヶ月もすると新たな展開が生まれてくるため、業界内でひんぱんな意見交換の場を持ち続けることが大切であることを強調。河上は、同社に「リーディングカンパニーとして、業界全体にベストプラクティスを共有してほしい」と期待を伝えて、セッションは終了となりました。
「Retail Unlocked 〜 小売業 DX の取組と事例のご紹介〜」
オンデマンド配信:「Retail Unlocked 〜 小売業 DX の取組と事例のご紹介〜」
スマーターリテイリングフォーラム事務局
OPOS 技術協議会・.NET 流通システム協議会
代表幹事
日本マイクロソフト株式会社
藤井 創一
藤井は、事例を交えながら小売業界の AI 活用における Microsoft の取り組みについての講演を行いました。まず、2024 年 1 月に開催された National Retail Federation(NRF)の年次カンファレンスでも AI が大きなキーワードになっており、小売業に大きな経済効果をもたらすと期待されていたことを報告。基調講演や各セッションの内容は、「リテールメディア」「サプライチェーンの強化」「顧客体験の向上」そして「従業員支援」の 4 つのテーマに集約されていたことを示します。
そして、「NRF では “AI 祭り”という言葉も出るくらい、ひとつの大きな流れになっていることを実感しました」と藤井。その言葉を裏づけるように、生成 AI の市場規模は小売業だけ見ても 4000 億ドルから 6600 億ドルに増加、経済効果は Microsoft が発表した試算で 1 ドルの投資に対して 3.45 ドルのリターンが見込めるという数値を示し、AI 活用に取り組んだ企業は確実に差別化に向けた道筋がつけられていると、その可能性を強調します。
ここから話は、Microsoft の取り組みの紹介に移ります。Microsoft は OpenAI社と協業して、最新の生成 AI ソリューションを提供しています。小売業界においては、製品デザイン開発からコンタクト センターにおける AI アシスタント、システム開発におけるコードの自動生成に至るまで、バリュー チェーンの End to End で AI の活用が進んでおり、アジアを見ても AI 活用の検討が加速していると藤井。我が国でも、87% の企業が AI を積極的に活用する段階にあることを示します。
「これらを踏まえて、私たちは “Retail Unlocked” というキーワードを提唱しています」と藤井。本セミナーのタイトルにも使われているこの言葉には、小売業と AI を組み合わせることによって「データによる新たな価値創出」「顧客エンゲージメントの向上」「リアルタイムなサプライチェーン」「従業員の業務効率化と働き方改革」という 4 つの象限に対して、そのポテンシャルを解放するための基盤を提供していく、という Microsoft の思いが込められています。
藤井はここから、Microsoft のクラウド製品とパートナー企業のクラウド ソリューションを組み合わせて小売業の DX を支援する、クラウド プラットフォーム「Microsoft Cloud for Retail」を活用した事例紹介を展開していきます。
まず海外の事例として、欧州の小売業大手カルフールを紹介。同社では Web サイトに AI アシスタントを導入し、顧客の予算やアレルゲンといった制約事項に応じた商品提案を行っています。また米国の小売業最大手ウォルマートも、顧客エンゲージメントと従業員支援に AI を活用するアプリケーションを開発。生成 AI に相談しながら買い物を進められる購買体験の向上や、生成 AI を相手に壁打ちすることでマーケティング企画の精度を高める業務効率化を図っています。
カルフールやウォルマートといった世界最大級の小売業者が AI に取り組み始めたことは非常に大きなトピックであり、今後全世界で具体的な動きが強まってくるという予想を示す藤井。ここからさらに国内の先進検証事例を紹介していきます。
まず、セブン銀行では多様化する ATM サービスの利便性を上げる対話型 AI アシスタントの導入を計画中です。またイオンでは、EC サイトの商品情報の自動生成に AI を活用して、顧客へのよりよい情報提供と業務効率化を推進しています。
こうした先進事例が積み上がりつつある現状を示しつつ、藤井は「使わなければいけないことはわかっているけれど、どういう方向で使えばいいのかわからないという小売業者の皆さまの悩みに対しても向き合っていかなければならない」と語り、NRF に参加された小売業者とのディスカッションエピソードを示しました。「小売業では経営者や従業員の貴重な知見を軸足にしながら、その意思決定や業務改善プロセスを、データ起点で革新していくことが求められている。生成 AI の価値は、今まで DX プロジェクトで取り込めきれなかったこういうリソースを巻き込んでいく際にも有効なのではないか」さらに、日本マイクロソフトが開催する「Microsoft Retail Open Lab」を紹介します。
このラボは、生成 AI の活用によって、日本の小売業のポテンシャルを解放するために、計画と実践における情報の共有と、オープンなコミュニケーション機会を提供することを目的として創設されたもの。2023 年 6 月と 12 月に開かれた会合では、有識者による貴重な示唆や、メルカリ、住友商事、日清食品といった企業各社による先進的な生成 AI 取り組み事例や課題の共有、また AI ソリューションの実装に伴走するパートナーの紹介が行われました。
「さらに今年の上半期にも、皆さまに成果を持ち寄っていただく機会を作ろうと思っています。ぜひ今日ご参加いただいた皆さまにもお声かけさせていただきたい」と藤井。小売業界全体で取り組みを進める重要性を改めて訴えかけて、セッションを締めくくりました。
Retail Open Lab 第一回セミナー 現場レポートはこちら
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「DX 革新を加速させるイオンの現在地」
イオン株式会社
CTO
兼 イオンスマートテクノロジー株式会社
取締役 CTO
山﨑 賢 氏
イオンスマートテクノロジー株式会社
CTO室 SRE チームリーダー
香西 俊幸 氏
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員アプリケーション統括本部長
榎並 利晃
本セッションでは日本マイクロソフト榎並がファシリテーターを務め、イオングループ CTO の山﨑氏とイオングループの DX を担うイオンスマートテクノロジーで SRE の主軸を担う香西氏を招いて、イオンの取り組みについての対話が展開されました。
まず、イオン グループにおける DX の現在地について山﨑氏は、「中に入ってみると上層部の理解もあり、DX の知見も豊富なことに驚きました」と語り、その背景には M & D を繰り返して成長してきたイオン グループならではの、異文化を受け入れて全社に展開する文化があるのではないかと推測。香西氏も、巨大なグループであるにもかかわらずレガシー システムが少なく、クラウド ネイティブな技術も積極的に導入されていて技術的にもチャレンジできる環境、と評価します。
イオン グループの開発プロセスにおける生成 AI の活用についての質問に対して山﨑氏は、「生成 AI によってエンジニアの生産性が大幅に向上する可能性がある。これを活用しないことは機会損失」という捉え方を提示。香西氏も「GitHub Copilot は、もはやなかった頃が考えられないくらい快適で、今後はこれまで積み上げてきたものが形を変える世界線に突入するのではないか」と、エンジニアとして大きな期待を抱いていることを示唆し、SRE 領域でも AI を活用したオペレーション改善を検討していると語りました。
また、巨大 B to C 企業でエンジニアとして働く価値と醍醐味についての質問に対して山﨑氏は、「ベンチャーと大企業の違いは規模だが、本質は課題解決。大企業ならではのしがらみは存在しない前提でふるまうべき」と、CTO としての心構えを提示。一方で大企業にありがちなコミュニケーションやナレッジの共有という課題については、コストにシビアな小売業者だからこそ、成功事例は伝播しやすい。つまり「サクセス ファースト」の考え方が鍵を握るのではないか、と語ります。また香西氏は、小売業にはエンジニアリングの介在する余地は想像以上に存在しており、店舗や売り場をひとつのシステムに見立てて SRE 的なアプローチを適用できないか、との考え方を示しました。
最後に「経営層に言いたいこと」について問われると山﨑氏は、「エンジニアをプロセスではなく、最終的な価値で判断してほしい。エンジニアの生産性は何時間働いたかではなく、市場から何を得られたかで図るべき」と示唆深い言葉で回答。イオンの役員はそれができているので、非常に働きやすいと語ります。重ねて、「今回のイベントで多くの仲間の存在を心強く感じました」と述べ、一社だけでなく日本のリテール全体を変えていくことが重要であり、今後も情報交換を続けていきましょう、と会場に呼びかけました。
「POS とデータ活用を促進する協議会標準化活動アップデート」
オンデマンド配信:「POS とデータ活用を促進する協議会標準化活動アップデート」
OPOS 技術協議会 技術部会長
NEC プラットフォームズ株式会社
五十嵐 満博 氏
.NET 流通システム協議会 技術部会長
東芝テック株式会社
高橋 伸幸 氏
本セッションでは、SRF を構成する OPOS 技術協議会および .NET 流通システム協議会からの活動報告が行われました。
最初に登壇したのは、OPOS 技術協議会 技術部会長 NEC プラットフォームズ株式会社の五十嵐 満博 氏。OPOS 技術協議会は、POS システムのアプリケーションとデバイス間のインターフェース標準仕様である「OPOS 仕様」の策定と普及を目的とした団体です。五十嵐氏によると、2023 年度の主な活動テーマは OPOS の 64 bit 環境への適用と、次世代の標準仕様に向けた検討でした。
まず前者について、POS システムの動作環境が 32 bit から 64 bit へと移行しつつあるなか、OPOS 仕様も 64 bit 環境に対応する必要があります。五十嵐氏は、64 bit 化に向けて CO や SO の64 bit 対応、.NET 環境への適用などが課題になっているとし、特に SO の対応に関して、POS ベンダーやデバイスベンダーの理解と協力を求めました。
後者のテーマについては、米国 OMG 傘下の RDTF を中心として、しばらく停滞していた次世代の POS の国際標準仕様の検討が再開されたことが報告されました。五十嵐氏は、この次世代仕様の目指すイメージとして、Web サービスによる構築、複数アプリケーションからのデバイス共有、RESTful な制御、JSON ペイロードの活用などを挙げて解説。検討課題としては、デバイスのハンドリング、排他制御に替わるシンプルな制御方法、インプット デバイスの制御、移行に向けた動機づけなどがあるとし、OPOS 技術協議会は、今後も環境の変化を捉えながら、日本の要求事項を踏まえた国際標準仕様の策定と普及に向けた活動を継続していくと述べてセッションを終了しました。
続いて .NET 流通システム協議会 技術部会長 東芝テック株式会社 高橋 伸幸 氏が登壇。.NET 流通システム協議会では、店舗システムを中心とした XML スキーマとデータモデルの標準仕様策定と普及を行っています。
高橋氏によると同協議会では、2023 年度は特に電子レシート分科会が電子レシート国際標準仕様の策定に参画し、国内要件の反映に取り組んできました。電子レシートの普及により、紙資源の削減や物理レシートの保管が不要になり、データ管理が簡単になるなどのメリットが考えられます。
同協議会では、2023 年 3 月に Digital Receipt API を OMG(国際標準化団体)に提案し、審議を経て 9 月に合格を得ています。その後ファイナライゼーション タスクフォース(FTF)を設立し、2024 年 3 月に予定されている Digital Receipt API の制定と FTF の終了に向けて活動中です。高橋氏は、電子レシートの標準フォーマットを活用することで、小売業界のデータ活用、例えばリテールメディア ビジネスの拡大などにも寄与できるはず、と力を込めます。
最後に 2024 年度の活動テーマとして、OMG への提案作業の継続、仕様書の改定・検証、技術者向け説明会の実施、事業者要求に応じた仕様書の拡張と最新化などを挙げ、最新の Digital Receipt API 仕様書やドキュメントは、日本マイクロソフトの協議会ホームページで公開されていることを告げてセッションを終了しました。
「リテールは、IT でもっと楽しくなる?」
オンデマンド配信:「リテールは、IT でもっと楽しくなる?」
株式会社サザビーリーグ
IT 統括 執行役員
石橋 晃 氏
サザビーリーグは、創業以来「わくわくすること」に重きを置いて業務を展開してきました。石橋氏自身も、顧客にダイレクトに喜んでもらえる小売業の楽しさに魅せられたひとりだと自己紹介。かつ、IT 業界での経験から常に新しい領域が生まれ好奇心を刺激される IT も非常に楽しい業界であると実感しており、「リテールは IT を掛け合わせるともっと楽しいことができるのではないか。そして IT も、リテールという巨大な実験場を使ってもっと楽しいことができるのではないか」という仮説を示し、セッションはその検証という形で展開されました。
同社の IT 部門はこれまでさまざまな DX 施策を推進してきました。石橋氏は、その施策に通底するのは「遊び心」だと語ります。うまくいった部分とそうでない部分があるものの、「当社は “ちょっとやってみたい” 精神を大切にする会社です。たとえ実用に至らなくても許容される文化があります」と石橋氏。当初の目論見通りにはいかなくても、別の場面や用途で使えるノウハウと技術は確実に蓄積されています。
2021 年から取り組みが始められた同社の DX プロジェクトは、「攻め」と「守り」の両面から進められたと石橋氏。「マーケティングや営業関連の攻めの DX だけではなく、インフラやセキュリティ、オペレーション改善といった守りの DX も考えることで初めて本当の DX が実現できるはず」とその意図を語り、DX 施策を解説していきます。
そして、大きな期待を持って来店する顧客の満足度を高めるためには、これからは AI の力が欠かせないとし、需要予測に基づく自動発注、人間関係まで加味されたシフト作成、RFID を用いた在庫管理などのアイデアを示しました。
「商品カタログの AI 化や、AI がメニューをお勧めしてくれるレストラン、洋服のコーディネートを提案してくれる AI コンシェルジュ。こういったアイデアをどのように実現するか考えるのはとても楽しいです」と石橋氏。冒頭の仮説「リテールは、IT でもっと楽しくなる ?」を「リテールは、AI でもっと楽しくなる !」に変換してみせ、「私たちは、ユーザーとしてもベンダーとしても、今日会場にいらっしゃる皆さまと一緒に、楽しくやっていきたいと思っています」と呼びかけて、セッションを終了しました。
「特化型 AI がもたらす、商業施設の新たな未来」
オンデマンド配信:「特化型 AI がもたらす、商業施設の新たな未来」
株式会社リゾーム
代表取締役
中山 博光 氏
大和ハウスリアルティマネジメント株式会社
不動産本部 SC 事業部 営業部 部長
佐々木 佑昌 氏
中山氏と佐々木氏は、株式会社リゾームが開発した商業施設特化型 AI ツール「PROCOCO AI on Azure」のデモンストレーションをもとに、リーシング業務の効率化についての議論を展開しました。
まず佐々木氏は、ある商業施設に新しい店舗を誘致するという設定で、PROCOCO AI on Azure に商業施設の情報を学習させていきます。そのうえで AI との会話を始め、周辺地域の特性を踏まえた 3 人のペルソナの設定を依頼。このペルソナたちに出店してほしい飲食店を議論させたところ、ヘルシー フード、地元の食材を使った料理、シニア向けのメニューといった提案と、健康、地元の食材、多様性、魅力的な雰囲気といったキーワードが浮かび上がりました。
ここから中山氏が引き継ぎ、得られたキーワードとターゲット層に基づいて、全国のテナント リストから AI に候補となる店舗を抽出させると、候補リストが作成され、店舗のホームページや口コミ情報、出店状況などの詳細情報も提示されました。続けて佐々木氏は、候補店舗への出店依頼メール文面の作成を AI に依頼。すると、瞬く間に商業施設の特徴や顧客ニーズを踏まえた内容のメールが生成されました。
デモンストレーションを終えて中山氏は、PROCOCO AI on Azure における最大の特徴はデータベースであることを強調。インターネット上の情報だけではなく、リゾーム社が持つ商業施設の過去の出退店データや、デベロッパーが持つ売上、賃料などの独自データを組み合わせることで、AI の精度が向上すると指摘します。また、AI の提案が必ずしも正解とは限らないこと、AI の提案を参考にしつつ、最終的な意思決定には経験豊富なベテランの知見が不可欠であることを主張しました。
これを受けて佐々木氏は、AI の活用によって新たな視点や気づきが得られ、ショッピングセンター同士の差別化に繋がる可能性があることを指摘。「将来的には、AI が売上予測や意思決定支援に活用できるのではないか」と展望を述べ、AI を活用することで、若手とベテランの知識・経験の差を埋められる可能性があることを示唆しました。
最後に中山氏は、AI を活用する上での注意点として、ユーザー自身が成長することの重要性を指摘。ベテランから中堅、新人まで含めてさまざまな人物が使うことで、その集合地を社内資産にしていくことが大切であり、「育児は育自」という言葉を引いて、AI を育てるためには、ユーザー自身が自己研鑽に努める必要があるとの考えを示してセッションを終了しました。