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業界

【特別対談】マリメッコCEO×マイクロソフト~創造の源泉は多様性に富んだコラボレーションとお互いへの尊敬の念

※ この記事は 2017年11月08日に DX LEADERS に掲載されたものです。

【モダンワークプレイス・インタビューシリーズ】第1回

鮮やかな色と大胆なデザインの柄で世界中にファンを持つ、フィンランドのアパレル企業であるMarimekko(マリメッコ)。マリメッコとマイクロソフトは「 Marimekko for Microsoft Surface 」コレクションで、「わたしらしさ」を表現しながら、よりイキイキと、高いパフォーマンスを発揮できることをコンセプトとした、 Surface 専用のスリーブやタイプカバー、スキンシールで協業している。その発表イベントのために来日したマリメッコ CEOのTiina Alahuhta-Kasko氏に、日本マイクロソフトの業務執行役員 Windows&デバイス ビジネス本部 本部長 三上智子が「創造性を発揮するための働き方」をテーマに話を聞いた。

マリメッコ CEO Tiina Alahuhta-Kasko氏(右)と日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス ビジネス本部 本部長 三上智子氏

Marimekko Oyj CEO Tiina Alahuhta-Kasko氏(右)と日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Windows&デバイス ビジネス本部 本部長 三上 智子(左)

マリメッコのミッションとは

三上:まず最初にマリメッコとはどのような会社なのか教えてください。

Tiina Alahuhta-Kasko氏(以下、Tiina):マリメッコが設立された1950年代初頭は、戦争が終わったばかりで、フィンランドはまだ貧しい国でした。文化的にも、何か失われたものがあると感じられた時代です。そこで、創業者のArmi Ratia(アルミ・ラティア)は若い女性のアーティストを集め、夫の工場で柄物のプリントを始めました。

その後、アルミが開催した大胆で自由なファッションショーが評判を呼んだことから、1951年、フィンランド語で「メアリーのドレス」を意味するマリメッコを社名として、ライフスタイルのコンセプトを提案する会社を設立しました。そのライフスタイルの中心にあるのが、ファブリックプリントの制作です。

創業以来、マリメッコのミッションは、自分らしくあるということ、そして日常生活をプリントの柄や色を通じて楽しんでもらうことにあります。

三上:自分らしくあるということは、非常に興味深いミッションですね。人はこれまでの自分から変わろうと努力するものですが、自分らしくあっていいというビジョンに、心惹かれます。

Tiina:それは自分自身の個性を大事にすることであり、さらには周囲に対しても、住む家や身に着ける服装の在り方から自己を表現することでもあります。そして、その根底にあるのは、自分自身が生活を楽しみ、満足することです。

マリメッコ CEO Tiina Alahuhta-Kasko氏

素晴らしい製品を生む、クリエイティブ・コミュニティという働き方

三上:マリメッコはコラボレーションを大切にする会社だと聞いています。

Tiina:マリメッコの仕事のやり方がユニークなのは、クリエイティブ・コミュニティと呼ばれるグループによって創造性を高めることにあります。私たちは、専門知識、文化背景、年齢、性別など、様々なバックグラウンドを持っている人をクリエイティブ・コミュニティへ迎え入れてきました。多様な背景を持つアーティストや専門家が一堂に会して自由に議論をしながら、その瞬間その瞬間でもっともイノベーティブなデザインを生み出していくのです。ダイバーシティ(多様性)のレベルが高ければ高いほど、良いものができると私たちは確信しています。

そして、マリメッコが大切にしている価値観は、大胆で失敗を恐れないことです。たとえ失敗するリスクがあっても、勇気をもって共に物事を成し遂げるという精神を、私たちは後押ししています。なぜなら、その精神から素晴らしい製品が生まれると考えているからです。
日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス ビジネス本部 本部長 三上智子

三上: 大胆であり、失敗を恐れないという点について、何か具体的な例はありますか。

Tiina:最も有名なのは、マリメッコの代表的なプリントであるUNIKKO(ウニッコ/けしの花)が誕生したときのエピソードでしょう。これは、マリメッコの歴史でもっとも有名なデザイナーであるマイヤ・イソラ(Maija Isola)の1964年の作品です。これが誕生する直前、創業者のアルミは自然界に存在する花より美しいものはないという考えから、花柄のプリントをやめるように言い渡していました。ところがマイヤは、確固たるビジョンをもって、ポピーの花をモチーフにしたプリントをデザインしたのです。それは確かに花柄ではありましたが、お姫様を感じさせるようなロマンチックなものではなく、非常に大胆かつ斬新なデザインでした。その内面から湧きだす強さや自由さが、マリメッコのミッションを体現していることを、アルミも認めるしかありませんでした。

マリメッコ CEO Tiina Alahuhta-Kasko氏

CEOの後ろの赤い花が、マリメッコの代表的なプリントであるウニッコ(UNIKKO)

三上:そうした多様性や大胆さを重視した企業文化は、今も引き継がれており、様々なデザイナーが協業しているのですね。

Tiina:ええ、そうです。現在のデザイナーグループには20人ほどが在籍していますが、何十年と働いているベテランもいれば、才能あふれる若手もいます。プリントデザイナーは、制作グループやファッショングループなど他部門他部署とも密接に連携しています。そうした会話や対話を通じて、自らデザインしたものが、プリント、シルエット、そして最終完成品として息が吹き込まれるまで見届けているのです。

三上:部門部署にかかわらず、お互いが尊敬し合っているということですね。

Tiina:そうです。まさに尊敬というのが大事なキーワードです。このようなクリエイティブな文化を繁栄させていくには、信頼という土台が欠かせません。その土台があるからこそ、大胆な発想ができるのです。そして、この大胆な発想がないと、本当の意味での創造性は生まれてこないと思います。こうした点について、私たちは特に注意を払っています。

マリメッコで働く人たちは一人一人が主人公です。私たちは、デザイナーに対してこうするべきだという制約を一切設けていません。私はCEOとして、いろいろな背景を持った人たちから、その才能を引き出し、必要なツールを提供し、のびのびと働ける環境を保つのが役割だと考えています。そして、そのためにはクリエイティブプロセスに関わる全ての人が、納得するまで十分に話し合うことが必要だと考えています。

Surface (サーフェイス)とのコラボレーシは運命的

三上:ところで、今回のマイクロソフト Surface (サーフェイス)とのコラボレーションについては、どうお考えでしょうか。

Tiina:自然体で受け入れることができました。それどころか、この2社はコラボレートするべきだという運命すら感じています。マリメッコは、自分らしさを表現するデザインを日常生活に取り入れるというのがミッションです。そして、言うまでもなく、デジタルデバイスは私たちの日常生活に密接に入りこんでいます。ですから、その両者が融合するのは自然な流れだと思ったのです。今回のコラボレーションを通じて、 Surface ユーザーの方々が、自分自身の個性やアイデンティティを表現するきっかけになることでしょう。

三上:今回は4種類のデザインがあります。この4つはどのように選んだのでしょうか。

Tiina:まず、マリメッコを象徴する代表的なデザインとして、先ほどもお話ししたウニッコとKAIVO(カイヴォ/泉)の2種類。そして、現代的なデザインとして、Räsymatto(ラシィマット/使い込まれたラグ)とSiirtolapuutarha(シイルトラプータルハ/市民菜園)の2種類です。優れたデザインは時代を超えて生き続けるというのが、私たちの考え方です。ですから、伝統的なものと現代的なものとが隣り合っても、まったく違和感がありません。まさに、マリメッコの自由と大胆さを象徴していると思います。

三上: それぞれデザインは異なりますが、脈々とマリメッコの伝統が流れていることがよく分かりました。 Surface という製品は、ユーザーの様々な利用シーンを想定して、使いやすいようにディテールにこだわって仕上げています。そういう意味ではマリメッコと Surface には共通項が数多くあり、本当にいいコラボレーションだったと思っています。

Marimekko for Microsoft Surface 。左上から時計回りに、シイルトラプータルハ(Siirtolapuutarha/市民菜園)、カイヴォ(KAIVO/泉)、ウニッコ(UNIKKO)とラシィマット(Räsymatto/使い込まれたラグ)