ハノーバー メッセ 2019 で見たインテリジェント マニュファクチャリングの未来
※本ブログは、米国時間 4/12 に公開された “Augmenting human intelligence: The future of intelligent manufacturing at Hannover Messe 2019” の抄訳 (しょうやく) です。
製造業界はいま、そのインテリジェント化を押し進めるテクノロジの助けを借りて、メーカーや従業員、顧客、さらには世界全体にまで恩恵をもたらすような、心躍らせる方法で未来を形作っています。その行く手に立ちはだかる課題もかつてないほど大きくなっていますが、今年のハノーバー メッセで示されたリーダーシップとイノベーションに触れた 220,000 人の来場者は、未来は明るいという期待を持って会場を後にしました。
マイクロソフトのミッションは、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを実現できるようにすることです。マイクロソフトは、メーカーが今日直面する課題やチャンスに対応し、顧客や従業員、および社会それぞれについてより良い成果を達成できるよう支援する発表をいくつか行い、この発表を通して自身のミッションをハノーバー メッセで表明しました。発表内容は以下の通りです。
- マイクロソフトによるインテリジェント エッジ テクノロジとモノのインターネット (IoT) に対する 50 億ドル規模の投資によって、製造業のデジタル トランスフォーメーションがどのように加速されているか。
- マイクロソフトと BMW による共同のコミュニティ イニシアチブ「Open Manufacturing Platform (OMP)」について。これは、Microsoft Azure インダストリー IoT クラウド プラットフォーム上に構築されたスマート ファクトリー ソリューションの開発を支援します。
- Microsoft Azure IP Advantage プログラムの拡張について。クラウドやインテリジェント エッジの IoT デバイス、ワークロード、アプリケーションの特許問題に関して、顧客とベンダーの双方を支援するための新機能が加わりました。
ハノーバー メッセ 2019 では、メーカーがどのように新しいテクノロジを歓迎し、採用しているかを物語る、賞賛すべきテーマやストーリーに出会うことができました。こういったテクノロジは、メーカーが事業の差別化や収益性といった核となる課題に取り組むうえで役立ちます。また、持続可能性や従業員、サイバーセキュリティに関する課題に対して、革新的かつ責任のある製造基準をもって取り組むうえでも助けとなります。
AI をエッジへ、さらにメインストリームへ
昨年は IoT がメインストリームで採用された年でした。今年は、人工知能 (AI) が製造業のメインストリームの一部となっています。企業幹部を対象にした調査では、回答者の 70% が、AI が製品やサービスへの需要を増加させることにつながると期待しています。[1]
AI を採用し、そこから得られるインサイトを活用するうえで役立つのが、IoT によって実現する新しいデジタル フィードバック ループです。このフィードバック ループによってメーカーは、作ったら終わりという従来の姿勢から「製品のサービス化」に向けたトランスフォーメーションを開始できるようになります。メーカーによる AI の導入状況について、詳しくはこちらの The Economist の記事をご覧ください。
ハノーバー メッセ 2019 で顧客、パートナー、業界アナリスト、オブザーバーといった人たちと話す中で今回確認できた最大の発見は、AI のインテリジェント エッジへの導入ができるようになるということでした。Microsoft Windows IoT、Azure IoT Hub、および Azure Stack のテクノロジは、メーカーがほぼリアルタイムで AI モデルを実行し、それを製造システムに統合できるように支援します。マイクロソフトが昨年買収した Bonsai テクノロジも来場者の関心を集めていました。Bonsai を用いれば、AI の知識が十分でないユーザーでも、課題を遂行するために製造システムやロボットをトレーニングできるようになります。こうしたマイクロソフトが提供するサポートは相まって、インテリジェント マニュファクチャリングに向けた多大なる前進を意味します。
マイクロソフトの展示では、顧客である再生可能エネルギー企業、Siemens Gamesa 社によって、同社が風力タービンの整備コストを最小化するため、ブレードに生じる問題の診断に AI を活用しているという実例が紹介されました。
AI の時代を自信を持ってリードする方法については、マイクロソフトの AI Business School で詳しく学ぶことができます。
マイクロソフトの違い: AIで製造業のスキル ギャップに対処
あらゆるメーカーにとって課題となっているのが、適切なスキルを備えた第一線の人材を引き付けることと、彼らを手助けして、急速に進化するテクノロジやビジネス プロセスを採用し、使いこなせるようになってもらうことです。ある調査によると、メーカーはこの課題に取り組むために AI を利用し、従業員の生産性が 76% 向上することを見込んでいます。[2]
ハノーバー メッセ 2019 での花形は、間違いなく AI でした。ほかと比べてマイクロソフトの展示を際立たせていたのは、AI などの技術を活用し、特に製造業で深刻さが増しているスキル ギャップに対処しようという取り組みでした。マイクロソフトの顧客とパートナーは、コラボレーションや AI、複合現実を使って従業員を手助けし、「デジタル製造業」に必要なスキルを身につけてもらうという革新的な事例を紹介していました。
例えば Microsoft 365 のコラボレーション テクノロジは、Goodyear 社が生産性を押し上げ、新たな効率性を生み出して製品提供を改善できるように支援しています。Cummins 社は Microsoft 365 を使ってスキル ギャップを減らし、ナレッジ マネジメントとコラボレーションに向けた最新のフレームワークを導入しました。
ハノーバー メッセ 2019でマイクロソフトのブースに多くの人を集めたのが HoloLens 2 と、製造業界の従業員を支援する新世代の複合現実アプリでした。マイクロソフトのパートナーである PTC 社は、Howden 社の顧客を手助けし、彼らが複合現実を用いて設備の想定外のダウンタイムを減らし、全体的な複数のメンテナンス戦略間で協調を深められるようにしました。また Bilfinger 社は、Industrial Tube と名付けられた社内用ナレッジ レポジトリのために、あらゆるデバイスで記録されたビデオを AI によってタグ付けする手法を紹介しました。
テクノロジで製造スキルの開発をどのように加速できるのかについて、詳しくはマイクロソフトによるこちらのホワイト ペーパーで紹介しています。
The Workforce of the Future (未来の労働力)
デジタル フィードバック ループとコネクテッド製品のイノベーション
現在、メーカーは生産から「製品のサービス化」への移行を積極的に検討していますが、そこには十分な動機があります。メーカーの 83% が、サービスとして製品を販売することで利益が増えると考えています。[3] メーカーにとってデジタル サービスは、顧客との関係強化や、提供する製品やサービスの差別化、競争力の獲得にも役立ちます。
多くのメーカーは、顧客成果に対する新しいインサイトをもたらす利益率の高いサービスに注力することで、この道のりの第一歩を踏み出すことになります。コネクテッド フィールド サービスは、ハノーバー メッセ 2019 の展示の中で、おそらく最も耳目を集めたビジネス シナリオでした。マイクロソフトのブースで日立ソリューションズが紹介したのは、メーカーが IoT や複合現実テクノロジ、AI を利用して、顧客と製品に対する新たなインサイトを得るために、デジタル フィードバック ループを始動させる手法です。さらに、このフィードバック ループによって、メーカーはコストの削減や設備の故障の予測、修復の加速、予防法の提案、顧客満足と売上げの向上を一段と進めることができます。
次の一歩は、製品の動作とデザインを改善するためにデータを活用することです。FEV 社が今年の展示で紹介したのは、自律的なコネクテッド カーからデータを収集するフィードバック ループです。集まったデータは、それらの車に走行方法を教えるために活かされます。FEV 社によるこの事業は、あらゆるコネクテッド製品のイノベーションに向けた製造業の未来モデルを体現する、極めて先進的な例であると言えます。今後数年以内に、このイノベーションが広がり、何億個ものアイテムが「デジタル ツイン」の事例となるのを目にすることでしょう。[4]
調査会社である Frost & Sullivan 社は、コネクテッド製品のイノベーションについて知るために役立つインサイトを提供しています。このイノベーションによって、メーカーは IoT コネクテッド製品で実現するデジタル フィードバック ループを活用することができ、製品開発の加速、競争優位の獲得、顧客に向けた価値の向上を一段と進めることができるようになります。
持続可能性のためのテクノロジ
製造業は、水と食料の供給、スマート シティ、自動運転車、都市農業といった分野のイノベーションを通じ、世界の持続可能性の向上に大きな影響力を持っています。持続可能性の達成は、ますます差し迫ったニーズです。世界の人口を養うためには、農業生産を 2050 年までに 70% 増加させる必要があるのです。[5]
マイクロソフトの顧客とパートナーの多くが、持続可能性に対する取り組みに向けて、注目に値する方法でテクノロジを活用しています。Ecolab 社は Azure とデータ分析を使って、水資源の管理を改善しています。Bühler 社はマイクロソフトと協力して、グローバルなフードチェーンの安全性と生産効率の向上に取り組んでいます。ABB 社は公共設備とビルのオートメーション システムをクラウド サービスに接続し、安全かつクリーンな自動運転車とスマート ビルディングからなる未来の都市を作り上げています。さらに OSRAM 社は、クラウド ベースの照明制御によるスマートな屋内農場と精密農業を紹介しました。
マイクロソフトは、AI for Earth (地球のための AI) プロジェクトやパイロット プログラム FarmBeats を通じて、企業が持続可能性プログラムに AI を利用できるよう支援しています。その詳細については、それぞれのページをご覧ください。
信頼とセキュリティ
コネクテッド ファクトリーに向けた流れが勢いを増しており、メーカーの 80% は、工場の生産性の改善が増産につながると期待しています。[6] コネクティビティが高まる一方の現代において、テクノロジとそのユーザーは、確固たる信頼と強力なセキュリティの両方を兼ね備えている必要があります。マイクロソフトはこの両者を強化するために、パートナーや顧客との協力を続けています。
自社製品が極めて多くの人々の生活に影響を与え、製品への信頼性が非常に重要となるメーカーにとっては、自社の製品と製品のサービス化による「サービスとしての製品」のそれぞれの安全を確保することが、引き続き極めて重要な任務となっています。製造業界がサイバーセキュリティに力を入れることには、金銭的な意義もあります。ある試算によると、サイバーセキュリティに由来する金銭的な損失は、2021 年までに世界全体で 6 兆ドルに達すると見られています。[7]
セキュリティに関しては、それをエンドツーエンドで捉えて、ポイント ソリューションの先を見据えることが大切です。すべての要素を含んだセキュリティ ソリューションを開発するためには、ハードウェアとソフトウェアのプロバイダーのエコシステムが必要です。マイクロソフトはパートナーシップやコミュニティを通じて、そのようなエコシステムの開発を続けています。
マイクロソフトは展示会で、産業用 IoT に向けた最新のセキュリティ サポートを紹介しました。その詳細については、こちらのページをご覧ください。
もっと知りたい方へ
ハノーバー メッセ 2019 の来場者は、展示されたテクノロジのイノベーションや実用例に刺激を受けました。展示会の詳しい内容は、こちらのイベント ページで紹介しています。インテリジェント マニュファクチャリングの未来についての詳細は、こちらのページからご覧ください。またソーシャル メディアでわたしたちをフォローすることで、最新情報をご確認いただけます。
[1] The Economist Intelligence Unit、「Intelligent Economies: AI’s transformation of industries and society」(2018 年 7 月)
[2] The Economist Intelligence Unit、「Intelligent Economies: AI’s transformation of industries and society」(2018 年 7 月)
[3] Columbus Global、「The Annual Manufacturing Report 2017: Key statistics」、2017 年
[4] Gartner、「Gartner Identifies the Top 10 Strategic Technology Trends for 2017」、2016 年
[5] Food and Agriculture Organization、「How to Feed the World in 2050」、2015 年
[6] Columbus Global、「The Annual Manufacturing Report 2017: Key statistics」、2017 年
[7] IDG Communications、「Top cybersecurity facts, figures and statistics for 2018」、2018 年 1 月
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