「モノづくり」の明るい未来: マイクロソフト、インテリジェントな産業イノベーションを発表
※本ブログは、米国時間 2019 年 3 月 28 日に Official Microsoft Blog で公開された ”Manufacturing a better future: Microsoft announces intelligent industry innovations” の抄訳 (しょうやく) です。
今や大規模な破壊的変化 (ディスラプション) の時代ですが、製造業にとって大きなチャンスでもあります。なぜなら、各メーカーは、新たなビジネス価値を創造し、従業員のスキルを向上させて鼓舞し、業務の最適化を図り、持続可能な未来のためのイノベーションを行おうと、それらを実現できる斬新な方法を探そうとするからです。AI や複合現実、自動化などの高度なテクノロジは、インダストリー 4.0 の推進役となり、次世代の高度生産システム「インテリジェント マニュファクチャリング」が現実となる未来を作り出していきます。現在マイクロソフトでは、顧客やパートナーがこの現実にさらに近づくためのアップデートを行っています。アップデートにより、セキュリティと生産性、そして効率性がそれぞれ強化され、新しいビジネス成果の達成につながります。
来週ドイツのハノーバーで開かれる、世界最大の産業テクノロジ展示会「ハノーバー メッセ」に、マイクロソフトはグローバル リーダーたちと合流し、以下のように、信頼性が高く革新的で、さらに改良された製造ソリューションを発表します。
- Azure は現在、デバイス、ハブ、およびクラウド リソースに対する IoT 向けのエンドツーエンドのセキュリティを備えた初の大規模パブリック クラウドとなっています。マイクロソフトでは次の 3 つの主要サービスに対して、IoT 向けの高度な脅威保護を追加します。Azure Security Center for IoT を使用して、セキュリティ ベスト プラクティスを実装し、ハブ、コンピューティング、データを含む IoT プロジェクト全体で脅威を軽減できます。Azure Sentinel は、初となるクラウド ネイティブのセキュリティ情報とイベント管理 (SIEM) のオファリングであり、これを使用することで、IoT デバイスに影響を与えることなどを含む脅威から企業全体を保護できます。Azure IOT Hub は現在、Azure Security Center for IoT と統合し、IoT のセキュリティ情報をハブ ポータル エクスペリエンス内部で直接提供します。
- OPC Twin と OPC Vault をマイクロソフトの Azure 産業用 IoT クラウド プラットフォーム ソリューションに導入することで、OPC UA が有効なマシンのデジタル ツインを製造業者に提供し、セキュリティと証明の管理を大幅に強化します。また、コネクテッド ファクトリ ソリューション アクセラレータの重要な強化についても発表します。このソリューション アクセラレータは OPC Twin と統合し、IoT Edge の導入プロセスが大幅に簡素化されました。
- Azure IP Advantage が IoT に拡張され、IoT デバイスを Azure に接続している Azure の顧客や、Azure Sphere や Windows IoT を使用するデバイスに対しても、Azure IP Advantage のメリットが広がります。さらに、LOT Network に参加する認定済みのスタートアップ企業は、LOT を通じて無償でマイクロソフトの特許内容を習得できます。
Azure IoT プラットフォームの更新内容の詳細については、Sam George のブログをご覧ください。Azure IP Advantage の詳細については、このブログで後ほど説明します。さらに、以下のようにビジネスにアップデートが加えられたことをお知らせします。
- 産業用インテリジェント イノベーション: ハノーバー メッセでは、HoloLens 2 による AI エクスペリエンスと複合現実のブレイクスルー、Dynamics 365 によるビジネス対応ソリューション、Microsoft 365 を使用してスキルの差を埋めるツールなど、メーカー向けのオファリングを幅広く展示します。
- ビジネスで成果を上げている顧客: マイクロソフトは、Bühler、Electrolux、Siemens Gamesa、ZEISS など、イノベーションを進める大手メーカーをサポートしています。詳しくは後ほど説明します。
- 新たなパートナー ソリューション: マイクロソフトと連携するパートナーのエコシステムの育成を続けて、メーカーの成功に役立ててており、今週はニュースの発表がいくつかあります。
- Future Computed書籍シリーズの最新刊:『The Future Computed: AI and Manufacturing』(未来のコンピューティング: AI と製造業) では、世界各地のメーカーが AI を採用する様子を追っています。この本では、AI が持つ可能性を生かすためには、適切な企業文化を形成し人材供給を行うことが重要となっていることについて、顧客の例を紹介します。また、労働市場の破壊的変化に対処し、AI の倫理的利用を育むにあたっての公共政策が果たす役割も探っています。ハノーバー メッセでは、5 月の出版に先立って、この本の主要なテーマを紹介します。
- 25 社を超える革新的企業がハノーバー メッセのブースに参加し、マイクロソフトと協力して、製造業に革命を起こす IoT、複合現実、AI、およびその他の主要テクノロジを活用している様子を展示します。
未来の工場を守り、つなげる
本日はハノーバー メッセに先立って、製造業向けの新製品およびプログラムの数々の進歩について詳細を説明します。
Azure IoT のセキュリティ: IoT および産業用 IoT (IIoT) が抱える課題の複雑さと規模の大きさは、2020 年までに世界中で 200 億を超えるエンドポイント デバイスが設置されるという大手市場調査会社の推定からも裏付けられ、しかもデバイスの 1 つ 1 つがセキュリティ リスクの可能性をはらんでいます。一部のクラウド プロバイダーはこの難問に少しずつ取り組んでいますが、Azure は、IoT のセキュリティに対してエンドツーエンドの統合されたアプローチを行う世界初のクラウド オファリングとなっています。
Volpara Solutions の CISO であり、Azure Security Center for IoT を早期に導入した Garth Beaumount 氏は、次のように話しています。「Microsoft Azure IoT のセキュリティ ソリューションは、IoT デバイスや IoT ハブだけでなく、当社のソリューションで使用するコンピューティングやデータのリソースも含めて、フル スタックの管理と脅威保護を提供しています。自力でやろうと空回りしないように効果的に支援し、当社の IoT セキュリティを他の Azure ベースのソリューションや他の系列のビジネス アプリケーションの使い方に合わせて適切に調整してくれます。」
Azure Security Center for IoT を使用することで、顧客は、IoT デバイス、エッジ、およびクラウド全体で欠けているセキュリティ設定を見つけることができます。たとえば、IoT デバイスで開いているポートを確認し、SQL データベースが暗号化され、あらゆる問題を修正するよう動作しているのを確認することができます。Azure Security Center for IoT では、1 日に 6 兆もの信号を分析するマイクロソフト インテリジェント セキュリティ グラフの幅広い脅威インテリジェンス情報を利用して、進化を続ける脅威から保護します。これはメーカーにとって、自社の (エッジ デバイスからアプリケーションまでの Azure IoT ソリューションを含む) すべての Azure ソリューションのセキュリティを、一元化されたダッシュボードで組み込みの数百のセキュリティ評価を利用して、一度に見渡せることを意味します。
Azure Sentinel を使用して、ユーザーは IoT デバイスから Azure、Office 365、オンプレミス システムへと企業全体に広がるアクティブな脅威を探し、対処することができます。
SecOps チームは、IoT ソリューションのサーフェス攻撃の低減、問題が深刻化する前の修正、機械学習による攻撃の回避、さらに、IoT 展開全体で脅威検出とセキュリティ体制管理を簡素化して重要な価値を獲得するための適切なツールを手にしました。これらの新しいオファリングを、Azure Sphere などのこれまでに発表したデバイス セキュリティ オファリングと組み合わせることで、お客様はデバイス、エッジ、クラウドへと広がっていく、マイクロソフトのみが提供するエンドツーエンドのセキュリティを使用して、自信を持って IoT イノベーションを利用できます。詳細については、こちらを参照してください。
コネクテッド ファクトリと産業用 IoT: コネクテッド ファクトリでは、すべてのマシンが相互に通信し、データ、IoT、および自動化を活用して、生産のあらゆる面を監視し、管理します。マイクロソフトでは、顧客のデジタル運用を簡素化し、安全に保護するコンポーネントを開発することで、こうした産業用 IoT シナリオ向けのオファリングを強化してきました。ハノーバー メッセのマイクロソフトのブースでは、OPC Twin を展示します。これは、OPC UA 対応マシンのデジタル ツインを作成して、その特定のマシンの情報モデルをクラウドで利用できるようにするというものです。お客様は、Azure で実行するマイクロサービスを使用して、自社の OPC Twin をクラウドから直接制御し、管理できます。さらに、OPC Vault によるセキュリティの進歩についても展示します。OPC Vault は、OPC UA サーバーの証明書の作成、管理、および失効をグローバル規模で行うことで、セキュリティ管理を自動化します。いずれのコンポーネントも、産業用 IoT ソリューションの簡素化とセキュリティによる保護を提供し、完全なオープン ソースであり GitHub で使用できます。
マイクロソフトではさらに、産業用 IoT シナリオでは、概念実証を始めるにあたって、簡便さとスピードが重要であることを理解しています。このため、マイクロソフトでは引き続きコネクテッド ファクトリ ソリューション アクセラレータを強化しています。これは、産業用 IoT の概念実証を迅速化するために設計されており、さらに、お客様の工場全体の OEE データを一元化されたダッシュボードに表示します。現在、コネクテッド ファクトリは OPC Twin のダッシュボードと統合し、製造業者が産業用 IoT の開始プロセスを合理化し、デジタル運用から洞察を生むことを支援します。
ビジネス イノベーションをサポートする
ビジネスのコネクテッド化が進む中、セキュリティは引き続き、成功に向けた最も重要な鍵となっています。マイクロソフトでは、エンドツーエンドのセキュリティをさらに一歩進めて、次のようにお客様のデータと知的財産を保護します。
Azure IP Advantage: Microsoft Azure IP Advantage プログラムは現在、Azure IoT のイノベーターとスタートアップ企業に新たなメリットをもたらします。Azure IP Advantage は 2017 年 2 月に最初に発表され、マイクロソフトのクラウドの顧客が抱える知的財産 (IP) のリスクに対して包括的な保護を提供しています。マイクロソフトではこのたび、予測メンテナンスの実施、デジタル資産および物理的資産の管理、全体的な効率や製品の安全性と品質の向上のために、IoT とエッジでイノベーションを起こしている顧客にもプログラムを拡大します。これらはすべて、膨大な量のデータとユニークなビジネス イノベーションを生み出します。Azure を利用する IoT エコ システムとスタートアップ企業に重点を置いて、以下のような新たな利点を提供することで、製造業界の顧客からのインプットに対応し、Azure IP Advantage プログラムにさらに大きな価値をもたらしています。
- マイクロソフトの Azure Sphere および Windows IoT に対する無制限の補償範囲
- IP 訴訟から自らを守るため、Azure を使用して IoT デバイスを活用する顧客は 1 万件の特許を利用可能
- Azure を利用するスタートアップ企業はマイクロソフトの特許の内容を無償で取得可能
プログラムの拡大に加えて、マイクロソフトでは昨年、顧客とパートナーの特許主張のリスク対応に役立てるため、Open Invention Network と LOT (license on transfer) Network に参加しています。つまり、マイクロソフトは、クラウドの IP リスク対応で、最も包括的なエンドツーエンドのフレームワークを提供していると確信しています。詳細については、Microsoft on the Issues のブログ (グローバル & 国内最先端レポート) をご覧ください。
マイクロソフトのテクノロジを足場とするメーカー
顧客は、製造業務でマイクロソフトのテクノロジを活用し、実際にビジネスで結果を出しています。最近の事例は以下のとおりです。
- Bühler は世界最大規模の食品加工ソリューション プロバイダーであり、マイクロソフトのブロックチェーン テクノロジを活用して、生産効率を向上させながら、世界規模で食品安全の基準を高め、食中毒発生率を削減しています。
- Electrolux はスイスの家電メーカーで、新しい Azure IoT スマート コネクテッド空気清浄機とアプリの発売に数週間でこぎつけました。研究開発期間は最小限に抑えられました。この Pure A9 は、ほこりの超微粒子、汚染物質、バクテリア、アレルゲン、悪臭を室内から除去します。
- Siemens Gamesa は再生可能エネルギーの大手企業で、自律飛行ドローンのデジタル プロセスを Microsoft Azure に移行し、Azure AI で組み込むことで、技術者による産業用風車の点検とメンテナンスの方法を合理化し、自動化しています。Azure AI サービスの統合により、このプロセスが大幅に促進され、画像認識が 34 秒に短縮されました。これは、手作業では 4 ~ 6 時間かかり、誤りも発生しやすくなります。
- ZEISS ではマイクロソフトとチームを組んで、コンパクトで万能な分光計の ZEISS Corona のプロセスを Microsoft Azure に接続する、分光測定とデータ共有のソリューションを提供しています。分光分析で得た生産データをクラウドにアップロードすることで、クライアントは必要な時に必要な場所で、自社の製品と生産に関する非常に貴重な情報を獲得できます。このソリューションを食品加工プロセスに実装して、重要な品質指標 (たとえば、脂肪分、水分、塩分) を生産ラインで直接監視することができます。これにより、生産管理者が工程の変動にただちに対処でき、原材料や電力をより効率的に使用すると同時に、品質と生産性の向上に役立ちます。
パートナーの新たなオファリングのハイライト
マイクロソフト ハノーバー メッセのブースでは、パートナー数社がソリューションを展示し、以下のような最新のイノベーションに関するニュースをお知らせします。
- Intel は、工場および産業アプリケーション用の最新業務用 PC の参照設計についてマイクロソフトと協力しています。今年の後半に入手可能となる、この参照設計を使用して、デバイス パートナーは完全にプロビジョニングされ、カスタマイズされた業務用 PC を構築できます。この PC を幅広いデバイスに接続して、マシン上または Azureクラウドの AI を使用してリアルタイムにデータを発見、管理、および分析できます。
- JDA は大手グローバル サプライ チェーン企業で、新しい Azure ベースの Luminate ソリューションを展示します。このソリューションはエンドツーエンドの危機管理センターの役割を果たし、これを使用することで企業は、サプライ チェーン全体、さらにはサードパーティにも拡大されたデジタル エコシステムからリアルタイムに得た情報を基に、理解、解釈、および行動することができます。
インテリジェント マニュファクチャリングの最前線を支援
マイクロソフトのソリューションは、本社からサプライ チェーンや工場の現場に至るまで幅広く、日常業務を合理化し、効率性・安全性・生産性の大幅な向上を推進するだけでなく、従業員のパフォーマンスの強化にも役立つことで、製造業務の向上を支援します。たとえば、
- Microsoft 365 は、工場現場の最前線で働く従業員を含む組織全体に、デジタル マニュファクチャリングに乗り遅れないために必要なスキルやツールを、安全な環境で提供します。Microsoft Teams は、現在の製造業の従業員が安全にコラボレーションやコミュニケーションを行うための方法を変化させています。Microsoft 365 の製造業での利用方法の詳細については、こちらをご覧ください。
- クラウド コンピューティングをエッジに近づけるという顧客のニーズが高まっています。Azure Data Box Edge は、データセンターや工場の現場など、既存のハードウェアのすぐそばで、顧客固有の環境に適合する強力な AI 対応エッジ アプライアンスとして、このニーズを満たすために役立ちます。データが生まれる場所に Azure のコンピューティング能力を提供するので、ネットワークの待機時間がなくなります。
- 複合現実アプリケーションである Dynamics 365 Remote Assist および Layout では、Microsoft HoloLens と HoloLens 2 を使用することで、生産性、コンプライアンス、安全性が飛躍的に向上します。製造業における Dynamics 365 の幅広いイノベーションの詳細については、こちらをご覧ください。
- 今年後半に利用可能となる、新しい Microsoft Dynamics 365 Guides for HoloLens および HoloLens 2 では、実際の作業のシナリオで必要となるツール、部品、および制度上の知識を手順を追って説明する操作を通じ、従業員の学習を支援します。
- 製造、サプライ チェーン、流通、および小売全体にわたる財務および実務の統一は、Dynamics 365 for Finance and Operations で容易になります。
- Dynamics 365 Connected Field Service によるインテリジェントなコネクテッド フィールド サービスは、メーカーによる問題の迅速な検出と解決、コネクテッド デバイスと機械学習の活用、それらの過程における効率性の向上とコスト削減に役立てることができます。
AI、複合現実、IoT が破壊的変化を巻き起こし、技術設計から顧客エンゲージメント、サプライ チェーンに至るまでバリュー チェーンが再定義される中で、製造業の未来は、業務のあらゆる面で新たなレベルのインテリジェンスを適用することにかかっています。来週、世界におけるマイクロソフトのインテリジェント マニュファクチャリング支援について、ご説明できるのを楽しみにしています。それまでは、ハノーバー メッセ 2019 のマイクロソフトにアクセスして、当日の予定や、マイクロソフトのチームとの商談の予約方法、ブースの場所 (ホール 7、スタンド C40) について詳細をご確認ください。
※ 本情報の内容 (添付文書、リンク先などを含む) は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。