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業界

デジタル化を加速させる新しい公共の開発のかたち~内閣官房 情報通信技術 (IT) 総合戦略室様向け内製化勉強会~

都会のビル群

 

世界中の政府・行政機関ではコロナ禍に対応するために、リモートワークを実践して国民・事業者と繋がるためにデジタルサービスを提供し、またデータの収集・整備・利活用等を迅速に行うための機能を継続してきています。現在それらを迅速に推進しデジタル変革を推進していくことが日本の政府・行政の早急な課題となってきています。そのような状況下で、今後デジタル変革を進め有事にも迅速かつ受難に対応できる社会を早期に実現していくために、政府システムおよびその理想モデルが今後どうあるべきかという検討要素として、その開発手法やプロセスの変革が求められています。

これらを背景として、今後のデジタル政策を検討されている内閣官房 情報通信技術 (IT) 総合戦略室様向けに、従来のシステムインテグレーション外部委託に依存せずに、外部の開発コミュニティの参画も促進しオープンソースの利活用をアジャイル型開発で包含し「内製化」すべく、内製化勉強会を実施させていただきました。
勉強会では多くの職員の皆さまにご参加いただき、日本マイクロソフトの執行役員最高技術責任者の榊原を中心とするマイクロソフトの講演者より、

  • 現在の政府システム開発、およびそれをふまえた政府調達に関する課題(弊社理解)、
  • ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の違いと、それらが政府システム開発に持つ意味、
  • 今後政府システム開発にアジャイル型開発を取り入れていくために求められること(弊社提言)
  • それらを実現している海外の主要国政府での取り組み事例のご紹介
  • オープンソースやその開発コミュニティの有効活用とアジャイル型開発の実現手段でプロセスである、マイクロソフトファミリーの GitHub の概要ご紹介

を主題に講演させていただきました。

 

内製化勉強会の様子

 

まずは、そもそも要件を事前に定義したうえで取り組むウォーターフォール型の現行の開発モデルが、必ずしも歴史的に成功してきているわけではなく、むしろ成功しているケースのほうが少ない点、そしてそれに対してサービスのもつ価値を短期サイクルで評価・享受することを繰り返し、継続的に改善・イノベーションを繰り返していくアジャイル型開発のほうが結果的に生産性がはるかに高い点等をご説明しました。その上で、ウォーターフォール型開発を採用している現行の政府システム開発とその調達においては、 (1) 政府側に知見が残らない点、(2) コストや品質が最適化されていない点、そして (3) スピード/迅速性に欠ける点を挙げ、それらが主に体制面、人財面、開発思想面、制度面の課題に起因することを、現状で生じている具体的現象 (問題点) となぜそれが問題なのかを踏まえて理解をいただきました。
さらに、アジャイル型開発で進めた場合には何がどう変わってくるのか、その意義や価値は何か、について解説し、それを政府システム開発にも採用していくことで、技術的負債を低減させると同時に今まで長年にわたって享受することができなかった継続的改善や、イノベーションを常に起こせる状態にすることを提言しました。

 

ウォーターフォールとアジャイル開発の違い

 

新たな開発運用モデルの図

 

ここまで弊社分析とそれに基づくご提言をいたしましたが、これだけでは「コンセプト」で終わってしまいます。
そこで、「それをどうしたら実現させていくことができるのか」のご説明をしました。
マイクロソフトはソフトウェアやクラウドサービスを提供するだけでなく、それらを顧客目線でご支援していくための取り組みとして、オープンソースへのコミットメント、そして顧客プロセスで具現化していくために中心的な役割を果たすマイクロソフトファミリーの GitHub、これらの内容を実証している各国政府および国内の事例が数多く存在します。その中から米国、英国、シンガポール、オーストラリア、イタリア、そして東京都様の事例を取り上げ、政府がもつべき役割、官民連携体制とシステム開発の方針、そのエコシステムを通じた中小含む技術者の育成と、デジタル社会の活性化などの主な成果について具体的にご理解いただきました。さらに、前述のマイクロソフト自身が製品開発プロセスにおいて、長年にわたる取り組みから学び、変革し、今日アジャイル型開発で顧客目線の価値を継続的に提供できるようになってきている点について、Windows の開発プロセスを例に挙げ Before & After で解説させていただきました。
最後に国民目線のデジタル変革をしていく上で内製化は 1 つのキーワードとなる点、そのために開発コミュニティを協同運用する体制を敷いていくのは一つの解になり、そのためには現状の仕組みを見直す必要がある点、その見直しのメリットは多岐にわたるという点をご提示し、今回の勉強会の結びといたしました。

 

デジタルトランスフォーメーションの図

 

勉強会を通じて一通りご理解いただいた後の Q&A セッションでは、今後継続的に取り組み解決策を見出していくものも含め、下記のような活発な議論が展開されました。

  • アジャイル型開発での継続的成果物である「スモールリリース」のイメージは?
  • 少しでもバグがあると叩かれてしまう現在の状況を乗り越えていく方法がアジャイル型開発にはあるのか?
  • アジャイル型開発を継続していく上でオープンデータを活用・反映させていく方法は有効なのでは
  • 継続的に取り組んでいく上で、予算感が固定額として見えない不安についてはどう捉えるべきか?
  • オープンソース利活用にあたり、国民含むユーザーと「一緒につくりあげていく」姿勢やプロセスは必要になるのでは?
  • アジャイル型開発をするにあたって、その評価や成功判断はどのようにしていくのがいいか?
  • ウォーターフォール型開発を否定するのではなく、例えば、ユーザー目線が重要かつ反映されるアジャイル型開発は国民に近いシステムの開発ほど適するのではないか?

 

今回参加いただいた多くの職員の方々からは、問題意識や事例を通じた解決策など、具体的な理解が得られた、とご好評をいただくことができました。

マイクロソフトとしては、今回の内製化勉強会だけにとどまらず、今後も政府のデジタル変革推進に求められる命題をご提示し、その解決策も政府職員の皆さまとご一緒に考えていきたいと考えております。
本勉強会のご機会をいただいたこと、またご参加いただいた職員の皆さまに感謝を申し上げます。