[最新事例集を公開] FIT 2022 レポート・日本マイクロソフトの金融機関向け DX 支援とは
※本ブログは、金融総合専門誌「ニッキン」による情報サイト「digital FIT」にて 2022 年 12 月 8 日に公開された[最新事例集を公開]FIT2022レポート・日本マイクロソフトの金融機関向けDX支援とは|digital FIT (nikkin.co.jp)の再掲です。
2022 年 11 月 10 日 (木)・11 日 (金) に開催された金融 IT 展示会「FIT 2022」では、日本マイクロソフトが 3 年ぶりにブースを構えた。今回の出展テーマは「”Future-first financial services” (金融業界向け DX ソリューション)」。金融業界へのソリューションとして日本マイクロソフトが重視する「革新的な顧客体験」「業務効率の向上」「金融犯罪への対応」を網羅するブース構成だ。
さらに、傘下の Nuance Japan、パートナー企業の Backbase Japan、Personetics、PHONE APPLI、Contentsquare Japan、電通国際情報サービス、日本ビジネスシステムズが、「Microsoft Azure (以下 Azure)」「Microsoft Dynamics 365 (以下 Dynamics 365)」や「Microsoft Teams (以下 Teams)」などのマイクロソフトのプラットフォームを活用したソリューションを紹介した。
ブース内では、ミニセミナーも併催され、同社とパートナー企業による DX ソリューションの紹介に、足を止めて熱心に耳を傾ける来場者も多かった。
本稿では、日本マイクロソフトの金融業界向けの戦略とブースの模様をご紹介する。
さらに、同社が作成した最新の金融事例集も特別公開。セブン銀行や三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、北國銀行、明治安田生命保険など 13 社の成功事例が詳細にまとめられている。
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日本マイクロソフトが金融業界向けソリューションに特化してブースを構えるのは今回が初めての試みであり 、それだけの理由がある。消費者の行動変容や顧客とのコミュニケーションのあり方が多様化する一方で、外部のみならず企業内部においても堅牢なセキュリティとコンプライアンスが求められる。こうしたニーズに応えるべく同社では、勘定系からマーケティング、社内コミュニケーションに至るまで幅広いソリューションの拡充を進めており、多くの金融機関への採用が広がっているからだ。
金融サービス営業統括本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長の藤井 達人氏から、今回の出展の狙いについて話を聞いた。
加速するデジタル上での顧客対応
感染対策が日常的におこなわれ、顧客が来店を自粛したり、行員が訪問営業をしにくくなったりという環境が続く中で、金融サービスの提供もデジタルチャネルへのシフトが進んだ。そのため、デジタルでの顧客との関係構築が重視され、その質の向上は喫緊の課題となった。
例えば、ローン申し込みの場合、ウェブで申し込みを受け付けるシステムがあり、顧客のステータス管理には別のシステムが使われ、審査のシステムはさらに別のシステムが存在する。それぞれが連携していないがために、業務と業務の間を介在するオペレーションが必要になる。このように分断された状態では業務をシームレスに遂行することは困難だ。また、行内での連携においても、顧客とのデジタル上でのやり取りをリアルタイムで担当部署と連携してタイムリーに応対する必要性が出てきている。日本マイクロソフトはこうした動きに着目している。
今回、日本マイクロソフトが金融業界向けに提案するのは、コミュニケーションと業務プロセスを円滑にする Teams から、Dynamics 365 などの業務効率化のツール、Microsoft 365 によるセキュリティとコンプライアンス管理まで、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム Azure で、業務のインフラとシステム、データの連携・統合をワンストップで実践できる DX ソリューションとなる。
多くの金融機関においては、すでに幅広くマイクロソフト製品が使われている環境がある。人と人とを繋げてビジネスプロセスを円滑にする Teams をベースとした仕組みの導入について、「こうした環境があるから、新しいツールを使い始める抵抗感を持たれることなく、安心して日本マイクロソフトのソリューションを選択していただけている」と藤井氏は話す。デジタル上での顧客対応に加え、行内においては、チャットによるやり取りから資料の共有、過去の履歴を検索できるなど、日常業務を Teams のプラットフォーム上でおこなえる。また、Teams は、オンライン会議システムとして使えるほか、社内の会議をグループチャットに移行したり、稟議や決裁を可能にしたりすることから、意思決定のスピードが上がったという金融機関の数が増えている。
例えば、PHONE APPLI が提供する「PHONE APPLI PEOPLE」は、Microsoft 365 と連携し、社内で連絡したい相手が会話可能であるかを確認し Teams でチャットをしたり Outlook でスケジュールを確認したりできるほか、顧客など外部との連絡も社内で共有された顧客情報を参照しながら初めてのコミュニケーションでも円滑におこなえる良さが評判のソリューションとなっている。
利便性や成約率の向上に直結する DX ソリューション
働き方改革や、データ分析とデータの利活用で顧客を可視化することにより高い付加価値を生み出すデジタルマーケティングへのシフトにおいても、業務の効率化を支える Dynamics 365 等と連携する多彩なソリューションがクラウドプラットフォーム Azure で提供されている。
中でも、金融に特化したソリューションを手がけるのが Backbase Japan と Personetics で、国内外で実績を伸ばしているフィンテック企業として知られる。昨今、銀行サービスをスマートフォンなどのアプリから利用する消費者が増え、特に PayPay や交通系電子マネーなど非銀行系の決済アプリとの連携や他社サービスとの連携が求められている。
Backbase Japanでは、こうしたニーズに対応したデジタルバンキングのソリューションを提供する。小売、中小企業、富裕層を対象に、口座開設やローン・融資の申し込みなどの場面でも、顧客とのエンゲージメントを支える。Dynamics 365、「Microsoft Power Platform (以下 Power Platform)」、Teams を含む Microsoft 365 とシームレスに連携する。
Personetics は、オープンバンキングを活用し、顧客の取引データや経済状況を可視化することで、新規の口座開設や資産管理を顧客ごとに最適化した提案を可能にする Dynamics 365 と連携している。
また、ウェブサイトからのローンの申し込み等で課題になるのが、顧客が途中で離脱することだ。Contentsquare Japan が提供するのは、EC 機能を備えたウェブサイトやスマートフォン等のモバイルアプリ上で、顧客が離脱することによる機会損失を防ぐなど、顧客の行動や意図を分析し、改善すべき点を明らかにするソリューションだ。
金融機関に対して、こうしたマイクロソフトのソリューションをニーズに合わせて導入支援するのが電通国際情報サービスと日本ビジネスシステムズだ。電通国際情報サービスは、ローン成約率向上や店舗業務の効率化、顧客の待ち時間を低減するなど、さまざまな業務改善に活用できる地域金融機関向けマーケティングプラットフォームとして「Dynamics 365 Customer Insights」の導入を支援する。散在しがちな顧客データを統合して、多面的に顧客を理解し、顧客の行動を可視化しながら、将来的な活用イメージを具体化する。このほか、賃貸不動産融資に特化した業務支援や、リモートワークに伴い煩雑化する従業員、管理職、人事や総務における作業負担を軽減する「勤怠チャットボットコンシェルジュ」なども提供している。
日本ビジネスシステムズは、金融業界の働き方改革を推進するマイクロソフトソリューションとして Dynamics 365、Power Platform、Microsoft 365 の導入を支援する。クラウドへ移管する懸念を払拭し、上流から下流まで、顧客企業のニーズに応じてシステム化の企画構想から内製化、定着化まで、継続的に伴走する。また Microsoft Teams Rooms デバイス体験セミナーを 1 枠 1 社限定で、虎ノ門ヒルズ森タワーで随時開催している。
デジタル技術が可能にするセキュリティとコンプライアンス
日本マイクロソフトが重視するもう一つのポイントが、セキュリティとコンプライアンスだ。セキュリティは、外部からの侵入に対しては言わずもがな、内部不正にも対処が求められる。
例えば、紙媒体で情報管理をすると、比較的容易に持ち出せてしまう。デジタル化することで情報漏洩や持ち出しが起きないよう、セキュリティとコンプライアンスを担保できる堅牢な環境を構築することが可能になる。また、最近ではコンプライアンスにも配慮が求められるため、退職する行員が大量にデータをダウンロードしていたり、ハラスメント的な言動が目立ったりなど、不適切な動きがあれば管理者にアラートされるなど、従業員と顧客を守るためにも、Teams を含め、Microsoft 365 の活用が広がりを見せている。
マイクロソフト傘下の Nuance Japan は、声紋認証を使った本人確認をわずか数秒で実現する驚異的な声紋認識技術と言語処理技術を有する。不正アクセスを防止する「Nuance Gatekeeper」は、顧客の資産保護が重要となる金融機関や高いセキュリティを求める企業で採用が進み、国内外 500 社が導入している。バーチャルアシスタントとして顧客対応の自動化を実現する対話型 AI のボイス・チャットボットの「Nuance Mix」は、顧客の問い合わせの意図を理解し FAQ に誘導するなど業務効率化に役立てられている。今回、この Nuance を含む、Dynamics 365、Power Platform、Teams、Azure からなる「Microsoft Digital Contact Center Platform (以下DCCP)」も紹介した。DCCP は、コンタクトセンター、コンタクトセンター AI、CRM のための統合プラットフォームで、より強固なセキュリティを担保しながら、個のニーズに沿った質の高いカスタマーサービスを求められる金融業界での活用が見込まれている。
地域金融機関が顧客のデータを活用しながら、自分たちのビジネス プロセスを、堅牢なセキュリティとコンプライアンスを守りながら、円滑かつ効率的に回していく。これを実践可能にするのが、DX ソリューションを提案する日本マイクロソフトの狙いだ。企業の規模や業態に関わらず、内部的な情報共有とコミュニケーション、顧客とのエンゲージメント、業務効率化とパフォーマンス向上のあり方の変革は進んでいる 。
金融機関に求められる中小企業・小規模企業の DX 化支援
ブース内のミニセミナーでは、「DX は自分事以上!地域の事業者は皆さんの支援をまっています」 と題して、マイクロソフトテクノロジーセンターの平鹿 一久氏が登壇し、金融機関による DX 支援へのニーズの高さや、金融業界での DX 実践のポイントが紹介された。DX の活用が浸透する一方で、難航する金融機関もある。IT 化と DX の違いに理解を深めるとともに、新しい仕組みを導入する際に生じがちな内部的な抵抗感など、経営者層や開発部門に共通する課題を紐解き、DX の実践を呼びかけた。
金融庁が公表した令和 4 年度「金融機関の取り組みの評価に関する企業アンケート調査*」では、地域金融機関をメインバンクとする中小企業・小規模企業の約 30% が「今後金融機関から受けたいサービス」として、「業務効率化のためのIT化・デジタル化への支援」を選んだことが明らかにされている。企業が金融機関による支援に期待を寄せる背景には、事業成長に視点を合わせた経営に資する支援と、圧倒的な信頼感、そして、金融機関自身が取り組んできた DX の実績が挙げられる。
(*https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20220630/01.pdf)
DX の推進を支える両輪として、「デジタル技術」と「イノベーション」という大きく 2 つの要素がある。イノベーションがデジタル技術を具体的な価値に変え、デジタル技術がイノベーションの武器となる。Teams を活用し、意思決定のスピードを数倍にした金融機関の事例なども紹介された。この両輪に、もう一つ大切な要素として、「今を変えようとする力」を発揮するリーダーシップや企業の文化がある。ミニセミナーに登壇した平鹿氏は「企業文化を培っていくことが支援のポイントになる。その力を増す方法は実践に尽きる」と強調した。マイクロソフトのデジタル技術は、金融機関でも中堅・中小企業でも同じ技術を活用できる。同社がデジタル技術を提案し、イノベーションを企業が実践する。そして、その実践の支援を同社・パートナー企業が担い、金融機関による中堅・中小企業への支援を支えていく姿勢が打ち出された。
金融サービスの業務に適した Surface シリーズが人気なワケ
ブースでは金融業界で多く採用されている端末「Microsoft Surface (以下、Surface)」シリーズも展示された。ローンや生命保険の申し込みなどの契約において使用すれば、単に紙を電子化するのではなく、プロセスを電子化するため、行員による手順の間違いやお客様の記入漏れなど、業務のミスを防ぐことができる。行員の業務の習熟度に関わらず、安定したクオリティでお客様への対応を実現し、事務作業も 1 台の Surface でおこなえる点が採用金融機関から評価されている。例えば、タブレットを活用した金融商品の提案から、内蔵カメラでお客様の公的書類の取り込み、Surface 専用ペン併用による電子署名 によりペーパーレスのまま申し込みを完結させ、PC から行内ネットワークで事務作業をおこなえる。まさに、PC の処理能力にタブレットの柔軟性を兼ね揃える Surface シリーズならではの魅力だ。
LTE 内蔵モデルなら、モバイル閉域網サービスを使って、お客様の大事なデータを外出先から安全な行内ネットワークに保存でき、閲覧もできる。そのため、渉外や営業などで外出する際も資料をあらかじめ印刷したり、渉外用デバイスにローカル保存したりといった手間が不要になる。外出が多い行員も直行・直帰がしやすくなり、仕事を効率化できる。バッテリー駆動は最長 19 時間 (モデルにより異なる) であるため、お客様への対応中に電源が落ちる心配もない。
最新の事例集や豊富な資料もブースの魅力に
最新情報の展示や専門家によるミニセミナーに加え、豊富な資料が配布されたのも多くの人がブースに足を運んだ理由に一つだった。日本マイクロソフトのデバイス・各種ソリューションのカタログに加え、パートナー各社の資料・事例集も配布された。
本稿では、当日の配布資料の中から日本マイクロソフトの金融機関事例集を特別公開する。
セブン銀行や三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、北國銀行、明治安田生命保険など 13 社の成功事例が詳細にまとめられている。
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(取材協力:FIT事務局)