斬新なアイデアで地方創生に挑む ZEROBILLBANK JAPAN
ZEROBILLBANK JAPAN 株式会社は、ブロックチェーンを得意とするスタートアップ企業であり、大企業との取り組みを次々と成功させた実績を持つ会社です。日本マイクロソフトが 2021 年 1 月に開始した金融業界向け DX 支援プログラム “Microsoft Enterprise Accelerator – Fintech/Insurtech (略称: MAFI)” のパートナー企業でもあります。
外資系 IT 企業で ASEAN を中心としたグローバル IT プロジェクトの事業開発をリードしたキャリアを持つ同社代表取締役 CEO の堀口氏、Business Development Manager 面谷氏に話をお聞きしました。
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藤井: 堀口さん、面谷さん、本日はお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いします。
堀口: よろしくお願いします。
面谷: どうぞよろしくお願いいたします。
ZEROBILLBANK JAPAN 堀口氏、面谷氏
コンソーシアムにおける個人データ管理の高度化
藤井: まず始めに、貴社の事業紹介と最近の新しい取り組みについて教えていただけますか?
堀口: はい、弊社は主に、ブロックチェーンを活用した SaaS のサービスを開発しています。2015 年にイスラエルで起業し、それ以来、ブロックチェーンの技術を強みとしてトークンやアセットを発行・流通させるための仕組みを構築してきました。
現在、いくつかの軸でサービス開発を行っていますが、まず 1 つ大きな軸としてパーソナルデータ管理のソリューションに取り組んでいます。昨今、情報銀行のトレンドも生まれ、個人から生まれるデータを活用してマネタイズする動きが全業種に広がっています。
GAFA のようなプラットフォーマーは、個人情報を適切に構造化することで非常に大きな事業を作っています。しかし一方で、日本では 2020 年 6 月に改正個人情報保護法が成立し、個人データの第三者提供時における提供元への新たな義務が追加されるなど、個人情報を適切に扱うことへのさらなる強化が求められるようになってきています。
つまり、個人データの主体から依頼されるリクエストに対するシステムや運用、また監査の体制、個人データの管理者の設置など、データを正しく管理する仕組みへのニーズがとても高まってきているというわけです。
そして、現在は MaaS やサプライチェーンの DX のように、業種の垣根を越えて複数の企業でコンソーシアムを組み、横断的にデータを活用して新しい産業を作ろうという動きが非常に活発になってきています。こういった企業間コンソーシアムでデータ連携するには大きな課題があります。
例えば、顧客の ID の連携のさせ方について、1 つの ID に寄せていく場合、他の ID との規約同意のさせ方は管理がとても悩ましい。さらに、N 対 N でそういう ID に紐つく個人データを連携していくとなると従来の管理の仕方では破綻してしまいます。
そこで、弊社では個人情報を安全に管理しながら、複数の企業間で共有をしていくという企業間データ管理ソリューションである “EPDM (Enterprise Personal Data Management)” を展開しています。この EDPM によって、データ管理の主体を、企業あるいはコンソーシアムではなく個人側に移行させ、よりユーザーの立場に立った個人データ活用ビジネスを行うことができます。
藤井: なるほど、ブロックチェーンの改ざんできない特性を利用し、ユーザーが同意した形でパーソナルデータストアに貯まっている状態を管理しているというわけですね。
堀口: そうです。データのログすべてが改ざんすることができない状態で保持されていますので、個人データ制御のオペレーションも簡易になりますし、システムの監査もやりやすくなるので、EPDM はデータ連携の世界において非常に価値があると考えています。
地方創生のニューノーマルへの挑戦
藤井: 最近では、地方創生に向けた新しい取り組みを行っていると伺いました。具体的にどのようなものなのでしょうか。
堀口: “AND LOCAL (アンドローカル)” という弊社の新しいサービスですね。大都市圏に住む地方出身者のネットワークを OMO (Online Merges with Offline) で地方と仮想的に繋ぎ、地元の地域経済の活性化に貢献しようというものになります。
藤井: ブロックチェーンと個人データ管理を得意とする御社が、なぜ地方創生というところに着目したのでしょうか? またサービスの具体的な内容を教えていただけますか。
面谷: まず、地方創生というテーマは日本全体にとっての非常に重要なテーマだと認識しており、弊社としても自社の技術を活かしてこのテーマで貢献したいと考えていました。
特に昨年から続くコロナ禍では、地方経済の柱である観光産業は打撃を受けています。外国人観光客に頼らない経済活性化を国内で実現する方策をいろいろと考えてきた中で、東京や大阪など大都市圏に出てきている地方出身者のネットワークを活用し、地元の商材を拡販していく方策をソリューション化することにしました。
昨年、ある実証実験をやってみて、仮説を検証してみました。弊社の地方出身の社員が、地元企業の名産品であるカニの共同購入を友人に呼び掛けてみたところ、短期間でかなりの数の注文を集めることができました。信頼できる友人のお勧め商品を、東京で買うよりも少し割安な価格で購入できるということで好評だったようです。
実証実験では地元出身者 1 名だけで動いていましたが、「郷土愛」を持つ地元出身者が大勢で協力することで、アンテナショップや地元の EC サイトの何倍ものトランザクションを起こせるという確信を得ることができたのです。これを、スマホアプリで完結する仕組みを提供することでさらにコンバージョンが向上すると見ています。
藤井: 着眼点が非常にユニークですね。地元出身者の郷土愛をサポートすることで、彼らが自発的に地元名産品の拡販に動いてくれるポジティブなサイクルを回そうということですね。
面谷: そうです。ポイントは、あくまでも「自発的に」というところで、地元出身者が拡販したことの報償を得る仕組みなどは入れません。ねずみ講のようなネガティブな風潮や動きが広まらないようにするための措置です。
我々の個人データ管理の仕組みを活用し、誰がどのような人に何を売ったのか、などの人と人のネットワークデータをプライバシーに最大限配慮したうえで蓄積・分析することで、地元企業、またアンテナショップなどが販促に利用できるようにできるのではないかと考えています。
藤井: このソリューションは、どのような所に使ってもらう想定でしょうか?
堀口: そうですね、やはり地方創生ということで、主に地銀をはじめとする地域金融機関、あるいは地方自治体、地元の地域商社などに活用いただけるのではないかと考えています。
現在、ある地方自治体、地銀と実証実験を進めるべく、プロトタイプのアプリ開発など準備を進めています。先ほど申し上げましたが、地方創生の「次の一手」がなかなか見つからない中、これまでに無い形での取り組みで効果について非常に高い期待をいただいています。将来的には、複数の地域同士で AND LOCAL を繋ぎ、地域を超えた地方活性化も目指したいと考えています。
藤井: ありがとうございました。ぜひ最初の取り組みが成功することを願っています。最後に、マイクロソフトに期待されていることをお聞かせください。
堀口: 弊社のサービスでは以前より Microsoft Azure をかなり活用しており、 Microsoft for Startups (マイクロソフトによるスタートアップ企業の支援プログラム) にも随分とお世話になりました。
実は Azure だけでなく他社クラウドも使っているのですが、Azure は非常に開発効率が高く、これからも積極的に活用したいと考えています。
金融業界の DX に向けた協働プログラムである Microsoft Enterprise Accelerator – Fintech/Insurtech にも参加させていただいていますし、地銀様に弊社のソリューションを一緒に提案していければと考えています。弊社の得意な領域とマイクロソフトのテクノロジーを掛け合わせて、世の中をもっと良くしていきたいですね。
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イスラエル発という日本では珍しい出目を持つゼロビルバンク社は、堀口氏ならびに多様なバックグラウンドを持つ同社メンバーのさまざまなアイデアがどんどんと形になり、試行されていくスピード感を持っています。
同社は、閉塞感が漂う日本を一変させるポテンシャルを持つ企業と言っても過言ではないかもしれません。同社の今後の展開にも大いに期待したいと思います。