1. リモートワークで業務効率は可能か
1-1. 元々、業務効率化を目指して始まったリモートワーク
2020 年度はまさに「リモートワーク元年」と呼ばれるような一年になりました。多くの企業が新型コロナウイルス感染拡大防止のためにリモートワーク制度を導入。ある調査によれば 2020 年 12 月時点では、在宅勤務を実施している企業は全体の 59% にまで上りました。ところが日が経つにつれて徐々に、再びオフィスに通うようになった企業も増え、爆発的に浸透した印象は薄いというのが現状です。リモートワーク制度を導入している企業の内訳をみると、どうしても一部の業務や部門に限定しているケースが多く、7 割近い企業において在宅勤務対象の業務や部門を広げられていない現状があります。
元々は、働き方改革や業務効率化を目的として導入されていたリモートワークですが、果たして本当に業務効率は改善されたのでしょうか。本当に改善されているのであれば、もっと多くの企業がリモートワークを推進するはずです。まだまだ出社したほうが効率が良いと考えている人の割合の方が大きいのかもしれません。
1-2. むしろ効率が落ちたと感じている?
公益財団法人日本生産性本部が 2020 年 10 月に行った「第 3 回 働く人の意識に関する調査」によると、「自宅勤務で効率が上がった」と答えた人は 10.2% に留まり、「やや上がった」は 40.3%、「やや下がった」は 32.8%、「効率が下がった 」とした人が 16.7% となっていました。すなわち「効率が下がる」とマイナスの回答をした人が全体の 49.5% を占めています。
一方、企業はリモートワークにおける業務効率についてどのように捉えているのでしょうか。ある調査によると、58% の企業が「オフィス勤務の方が業務上効率的である」と回答。15% が「在宅勤務の方が効率的」、27% が「業務効率はどちらも同じ」と回答しました。
1-3. 業務効率が低下する理由
どうして効率が下がっているのでしょうか。普通に考えるならば、通勤時間が無くなったり、残業時間がなくなったのですから、業務効率がアップしても良いようですが、現実的にはなかなか成果があがっていないようです。その理由として「対面の方がコミュニケーションがとりやすい」「意思疎通がしやすく認識の相違が少ない」「社内で電子化が進んでいます」「紙の資料、ハンコを必要とする業務が多い」という声があがっています。また、通信の課題も阻害容認になっています。一般的なインターネット回線ではなく、会社が用意する VPN を活用するとリモートアクセスのレスポンスが低く、それが業務効率を低下させるという声もありました。またモニターやプリンタ、FAX、裁断機など業務に必要な機器がオフィスには全てそろっているからという理由もありました。
同様に業務に必要な文書の電子化が進んでおらず、在宅オンリーで対応可能な業務に限りがあることから、オフィスの方が効率的に業務を行えるという現状もあります。
コミュニケーションの問題は、利用者への教育によって改善できる可能性はあります。ところが、十分な意思疎通から共通認識を得た上で進めることを重視する業務については、在宅勤務時には認識の相違によって手戻りが発生するといったリスクもあります。
1-4. 業務効率化できたという声も
もちろん、リモートワークの方が業務効率がアップすると感じている人もいます。例えば、「静かで割り込まれず、業務に集中できる」「通勤時間を業務時間に割り当てられる」「会議が効率化される」「ツールの整備により問い合わせが電話からチャットになったことで、作業を止めずに対応できる」といった声があがっています。
また設計や開発業務、所定の書類作成が多い業務においては、リモートワークの方が集中しやすく、業務を効率化できる傾向が見られます。通勤がなくなることでストレスも軽減されますし、通勤時間を別の業務に割り当てられるようになることで、業務上のアウトプットを増やせるだけ効率が上がります。