法人向けオンライン会議でも大活躍。オンライン通訳のサービス内容と注意点を解説
2021 年 9 月 27 日
リモートワークの浸透と共にオンライン会議やイベントが普及し、併せて通訳もオンラインですることが当たり前になってきました。
そこで今回は、「オンライン通訳サービス」について、サービス内容やサービス選択の際の注意点などを紹介します。
1. オンライン通訳の特徴
まず、オンライン通訳とはどういうものか、そのメリットは何か、そしてどのような場面で利用するのか、特徴などを紹介します。
1-1. オンライン通訳の概要
オンライン通訳は、他言語との会話の通訳を、現地にスタッフを派遣することなくオンライン会議システムやスマートフォン、あるいはタブレットなどの端末を通じて行う通訳サービスのことです。
リモート通訳やテレビ電話型通訳とも言い、以下のような場面で利用されます。
- オンライン会議
- オンライン セミナー
- オンライン シンポジウム
- オンライン インタビュー
- 商談、接客
国内および海外を問わず複数の拠点間で、音声/ビデオ通話のリアルタイムな通訳が可能です。
・オンライン通訳のメリット
オンライン通訳には、通訳スタッフを帯同する一般的な通訳サービスと違い、次のようなメリットがあります。
- 通訳スタッフの出張経費、移動時間の削減が可能
- 通訳機材の準備や設営、撤去が不要
- 急な場合でも対応可能
- 通訳者の派遣が難しい地域でも利用可能
・オンライン通訳の利用例
オンライン通訳は、次のような場面で利用できます。
- 海外拠点との社内会議、研修
- 海外取引先との打ち合わせ、商談
- 外国人スピーカーによるセミナー、イベント、シンポジウム
- 外国人に対するユーザー インタビュー
- 外国人との面談
- 店舗での外国人顧客への対応
1-2.オンライン通訳のサービス内容
オンライン通訳は、主に次のようなサービスを提供しています。
・通訳方法
通訳方法は AI (人工知能) を利用した機械によるものと、通訳専門スタッフによるものに分かれます。
(1) 機械翻訳
AI 翻訳システムによって翻訳する方法が機械翻訳です。
話者の音声を AI が認識、翻訳してパソコンやスマートフォン、タブレット、あるいは専用翻訳端末の画面に文字で表示します。
翻訳精度は人による通訳に比べて低くなることがありますが、コストを低く抑えられます。文字起こしされた翻訳データを、多言語の議事録としてダウンロードできる点がメリットです。
(2) 通訳者による通訳
専門の通訳スタッフによって通訳する方法です。
話者の音声を通訳スタッフが音声にて通訳します。
通訳する言語や専門分野に精通したスタッフが精度の高い通訳を行います。さらに、話者の音声だけでなく、Web カメラで話者の表情をうかがいながら通訳するので、対面で行う通訳と同様の精度が見込まれます。
・通訳種別
オンライン通訳には、同時通訳、逐次通訳、文字起こしの 3 つの通訳種別があります。シーンや先方の要望に合わせて選択が可能です。
(1) 同時通訳
通訳者が話者の発言を聞きながら、ほぼ同時に訳を伝える通訳方法です。
話者は通訳のために話を区切る必要がありません。オンラインで同時通訳を実現するためには、専用システムを導入する必要があり、他の通訳種別に比べ価格も高めに設定されています。
(2) 逐次通訳
話者の発言を短く「切りの良いところ」で一度止めてもらい、参加者に訳を伝える最も一般的な通訳方法です。
Web 会議システムを利用した通訳の場合は、会議参加者と同様に Web 会議に参加し、通訳を行います。
(3) 文字起こし
話者の発言を機械翻訳システムで翻訳し、リアルタイムに文字で表示する方法です。
通訳だけではなく、会議に必要な資料の翻訳、多言語による議事録を作成するサービスを行う企業もあります。
2. オンライン通訳導入の注意点
ここでは、オンライン通訳導入を検討する際に注意したいポイントについて紹介します。
2-1. 料金
オンライン通訳のサービス利用料だけでなく、インターネット回線や機器類に要する費用、またサービス環境を維持するためのメンテナンス費用などを総合的に勘案する必要があります。
2-2. 対応言語
オンライン通訳はサービスによって対応している言語が異なります。
ほとんどのサービスでは英語に対応していますが、英語以外の言語の通訳が必要な場合は、対応可能かどうかを確認しておく必要があります。使用言語が不明な場合は、まずは英語と中国語に対応できるようにしておきましょう。
2-3. 対応分野、利用可能時間
・対応分野
オンライン通訳は、サービスによって対応している分野や得意としている業界が異なります。
自社の事業領域をカバーしていて、専門用語や業界用語にも精通しているかどうか、実績をチェックする必要があります。中には法人向けではないサービスもあるので、確認が必要です。ご自身の仕事内容と照らし合わせながら選択をすべきでしょう。
・利用可能時間
サービスによっては、通訳サービスの提供時間とサポート時間が異なる場合があります。
オンライン会議中のトラブル対応など、必要なタイミングでサポートを受けられるかどうかはビジネスの成否にも関わりますので、必ず確認しましょう。
2-4. 必要なシステム
サービスが使える Web 会議システムは何か、OS の制限はないか、今使用している端末に対応しているか、マイクなどの付属機器は不要かなど、必要な端末や機器の条件を確認しておきます。
また、現在利用しているインターネット回線の速度や帯域幅などが導入を検討しているサービスの利用条件を満たしているのかどうか、自社の環境全般をチェックします。
特に Web 会議で同時通訳サービスを利用する場合、スムーズに通訳するための独自システムや機材を導入しなくてはいけないサービスもあるので、事前に確認しておく必要があります。
2-5. 連携時の安定性
既存の Web 会議システムとの連携によって翻訳サービスを利用する場合にも注意が必要です。
Web 会議システムは、音声通話やビデオ通話をするための高い機能を備えており一定のクオリティを保っていますが、必ずしもオンライン通訳サービスとの連携が前提になっていない場合もあります。オンライン通訳サービスとの連携が可能かどうか、また可能な場合の安定性はどうかを必ず確認しておく必要があります。
また、通信トラブルが発生した場合、オンライン通訳サービス提供企業では対応できないので、Web 会議システム提供企業側でサポートが可能かどうかも確認しておきます。
画面がフリーズしたり、音声が途切れたりといったことが頻繁に起こると、顧客満足度低下につながるので、トライアル利用や事前リハーサルなどで安定性や使い勝手を事前に試してみることも必要です。
2-6. 通信トラブルの回避
オンライン通訳サービスを利用する際は、通信トラブルや発言者の音声が不鮮明なため通訳者の聞き取りが困難になるなど、サービスが中断してしまう要因を避けることが肝要です。
以下のポイントをおさえて、トラブルを事前に回避しましょう。
(1) リハーサルの実施
Web 会議開始の 15 分~ 30 分前までに参加者全員で接続を開始し、リハーサルを行っておくことで、事前に音声などの不具合があったら、調整をお願いし、本番までに改善することができます。
(2) 有線での接続
Web 会議への参加は、なるべく Wi-fi での接続を避け、安定した通信が行える有線で接続するようにします。
(3) マイクの選定
PC のマイクは、指向性が広く発話者以外の周囲の音を拾いやすいものが一般的です。通訳者が聞き取りにくい状況になりやすいので、単一指向性のマイクやノイズレス マイク、ヘッド セットなどを利用するようにします。
(4) マイクのミュート
発言をしないときはマイクをミュートにしてハウリングや雑音の混入を防ぎ、通訳を行いやすい環境を整えます。
(5) トラブル発生時の対処
通信トラブルが発生した場合に備えて、プロバイダー、回線事業者、社内サーバー管理者など、トラブルの内容に適した緊急連絡先と連絡手段を予め決めておきます。
3. 主なオンライン通訳サービスの紹介
ここでは、主なオンライン通訳サービスと、その特徴をご紹介します。
・オンヤク
(画像出典:オンヤク Web サイト)
オンヤクは、AI 翻訳サービスの株式会社ロゼッタが運営するオンライン通訳サービスです。
Web 会議の内容をリアルタイムで自動翻訳し、AI が自動で文字起こしをします。翻訳された会議内容は多言語での議事録としてダウンロード可能です。
項目 | 内容 |
---|---|
通訳方法 |
機械翻訳
|
通訳種別 |
文字起こし
|
対応言語 |
英語、中国語、韓国語のほか、フランス語、スペイン語など、ビジネスで用いられるほぼすべての言語に対応
※ モバイル版は、以下の言語に対応しています (※2021 年 4 月現在) 日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、フランス語 、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語 、クメール語、インドネシア語 |
対応分野 |
あらゆる専門分野に対応する AI 翻訳システム「T-3MT」との連携で、高度な翻訳にも対応
|
契約形態・利用料金 |
年間契約 33,000円 (税込) / 月額換算 (ユーザー数無制限、年間利用上限 360 時間) より
|
そのほか |
Microsoft Teams、Zoom、Skypeなどに対応
PC インストール版、Web ブラウザー版、モバイル版あり |
推奨対象 |
通訳者までは必要ないが、通訳の機会が多くコストを抑えたい場合
|
・OCiETe (オシエテ)
(画像出典:OCieTe Web サイト)
株式会社オシエテが提供する、Web 会議や商談などビジネス ユースに絞ったオンライン通訳サービスです。会議や商談の内容に合わせて、通訳者を選ぶことができます。
項目 | 内容 |
---|---|
通訳方法 |
通訳者による通訳
|
通訳種別 |
同時通訳、逐次通訳
|
対応言語 |
日本語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、その他 50 言語に対応
|
対応分野 |
600 名の登録通訳者の中から希望に沿った通訳者を選択可能
|
契約形態・利用料金 |
年間契約 100,000円 (税別)/ 月 (6 時間通訳利用料込み)
*6 時間以降 17,000円 (税別) / 時 |
そのほか |
Microsoft Teams、Zoom、Google meet など、あらゆる Web 会議システムに対応
|
推奨対象 |
通訳者が必要な頻度が高く、通訳内容に専門性が必要な場合
|
・NOVA オンライン通訳サービス
(画像出典:NOVA 法人向けサービス Web サイト)
「駅前留学」NOVA の NOVAホールディングス株式会社が提供するオンライン通訳サービスです。Web 会議システムでの逐次翻訳、あるいは同時通訳に限定しています。
NOVA オンライン通訳サービス
・Oyraa ENTERPRISE
(画像出典: Oyraa ENTERPRISE Web サイト)
株式会社Oyraa が提供する Oyraa ENTERPRISE は、必要なタイミングで必要な分だけ利用できる、オンライン通訳サービスです。 マイナー言語を含む 153 か国語、142 専門分野をカバーしています。 面倒な操作も不要で、スマホやタブレット端末から、簡単に各分野の専門的な知識を持ったプロの通訳者を呼び出せます。
項目 | 内容 |
---|---|
通訳方法 |
通訳者による通訳
|
通訳種別 |
逐次通訳
|
対応言語 |
英語、中国語、スペイン語、フランス語などのメジャー言語から、スワヒリ語などのマイナー言語まで、153 か国の言語に対応
|
対応分野 |
ビジネス、医療、エンターテインメント、アート、法律、金融など、幅広い専門分野に対応
|
契約形態・利用料金 |
従量契約 250 円 (税込) / 分
期間契約 エコノミープラン 9,000 円 (税込) / 月 (1 時間まで) より |
そのほか |
プレミアム プラン、従量プランは 24 時間 365 日対応可能
|
推奨対象 |
商談など、外出先で通訳が必要な場面が多い場合や、急な外国人との商談などで通訳が必要となった場合
|
・クラウド通訳
(画像出典: クラウド通訳 Web サイト)
クラウド通訳は、関西電力グループの株式会社オプテージが提供するオンライン通訳サービスです。専用アプリをスマーフォンやタブレットにインストールし、通訳が必要な際に通訳者を呼び出して利用します。店舗への外国人来店者の通訳対応といった日常的な会話に絞ったオンライン通訳サービスです。
クラウド通訳のオンライン通訳サービス
4. まとめ
リモート ワークの普及により、会議や情報共有も Microsoft Teams などのコミュニケーション ツールを活用しオンラインで行うようになってきました。そうした働き方の変化に伴い、通訳サービスも時間や場所を選ばずオンライン上で可能となったのは、当然の流れと言えるでしょう。
また、光回線やギガ ビット通信、5G などの高速通信環境の整備が進んだことも、オンライン通訳が違和感なく導入された要因です。
こうした社会背景が、国内に限らず国外からも優秀な人材を確保することを容易にしています。今後、オンライン通訳はますます必要かつ重要なサービスになりそうです。
リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために
リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。
これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。
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