デジタル トランスフォーメーション (DX) 実現に向けた大まかなマイルストーン
2022 年 4 月 25 日
必要性は理解しつつも、どのように進めていけば良いのか? 具体的な道筋が見えないという声が多い「DX (デジタル トランスフォーメーション)」。特に、人手不足に悩む中堅・中小企業にとっては大きな壁になっているようです。しかし、自分たちの会社の規模や目的に合わせて、無理なく進めることが重要だと言われているのも事実。本記事では、DX を円滑に進めるためのマイルストーンの置き方について解説していきます。
1. DX (デジタル トランスフォーメーション) とは?
まずは、「DX (デジタル トランスフォーメーション)」の定義を正しく理解しましょう。
1-1. “変革”を意味する DX
DX は「デジタル トランスフォーメーション」の略語で、2004 年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏が提唱した概念です。「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」ことを意味していますが、「デジタル トランスフォーメーション = Digital Transformation」を直訳すると「デジタル変換」になりますが、“変換”というよりも“変革”という意味合いを持っています。
日本における DX の定義を理解する指針となるのが経済産業省が発表しているガイドラインです。そこにも「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネス モデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とあり、“変革”という言葉が用いられています。
1-2. DX のメリット
では、DX を進めることで、企業はどのようなメリットを享受できるのでしょうか。経済産業省のガイドラインに記載があるように「ビジネス モデルを変革」と「業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革することで、競争優位性を確立できる」とあります。すなわちデータやデジタル技術を活用して、これまでになかった製品・サービス、ビジネス モデルを生み出し、業務プロセスを再構築し、生産性の向上・コスト削減・時間短縮をもたらし、さらに業務そのものを見直し、働き方に変革をもたらすというメリットがあるということです。DX によって、新たなサービスを創出すると同時に、生産性の向上を図り、働きやすい環境をつくるのですから、DX はまさに企業の在り方、ビジネス全体を根底から大きく変革する行為といえます
1-3. DX を進める重要性
もはや、テクノロジーを抜きにして現在のビジネスは成立しません。それどころか、ますます変化していく市場であったり、顧客のニーズに応えていくためにはテクノロジーの活用は必要不可欠と言えます。さらに働き方改革とコロナ禍という流れの中で、リモートワークは必須の制度となりますが、これもテクノロジー抜きでは導入できないものです。もはや私たちのビジネスはもちろん、生活そのものもテクノロジー抜きでは成立しないといっても過言ではないでしょう。
さらにいえば、テクノロジーの進化は留まることはありません。さらに加速するものと考えられます。ビジネス感度の高いアメリカなどの DX 先進国は、このテクノロジーの進化を先取りし、どんどん新しいビジネス モデルを仕掛けてくるでしょう。GAFAM を中心としたテクノロジー企業が、あっという間にグローバルの市場を席巻したように、この後も新しい企業が生まれてきます。DX に乗り遅れている日本の企業は、その気運にすら乗っかることはできません。このグローバルな時代、国際的な競争力を強化していくためには、まさに DX の推進は必須といえます。これは、日本の市場を守っていくためにすべての日本企業が取り組むべき施策です。
1-4. 経済産業省が DX の後押しをする理由
上記のような危機感を覚えた経済産業省が 2018 年に「DX レポート ~ IT システム「2025 年の崖」克服と DX の本格的な展開~」を発表。このレポートでは、既存基幹システムの老朽化や IT 人材の不足など、2025 年を節目に多くの問題が生じることに警鐘を鳴らしています。そこには「DX が進まなければ 2025 年以降、最大で年間 12 兆円の経済損失が生じる可能性が高い」という記述があり、企業に DX へ取り組むことの重要性を訴えています。政府機関による民間企業への言及はまさに異例であり、それだけ深刻な状況にあるということが理解できます。
2. DX の進め方
DX に後れを取っていると言われている日本の企業、特に中堅・中小企業においては一体、どのような手順を踏んで DX 化を進めていけばいいのでしょうか。
2-1. 足下を見ながら背伸びせずに進める
DX の進め方にセオリーはありません。企業の規模や現状によって大きく変わってきますし、業態や事業フェーズによっても違います。まったくのゼロから DX 化を進めるのであれば、あらゆる物事、事業と同じように現状把握からはじめて、目標を定め、大まかなマイルストーンを設定しながら進めていくのがベターです。一言で言えば、「DX 戦略」という表現になるのですが、あまりにも理想論に走りすぎると、現実味がなくなってしまいます。正直言って、ほとんどの中小企業では、DX を始めると行っても土壌すらない状態なので、いきなりセオリーを当てはめても難しい部分はあります。しかも、DX 以外の実務もありますし、そもそも DX を進めていくためのリソースが不足しているという課題もあります。まずは自社の状況を見定め、足下を見ながら背伸びせずに進めていくことが重要です。
2-2. 三段階ある DX 化の道のり
大まかに言うと、DX 化の道のりには三段階あると思っています。まずは、アナログ情報をデジタル化する段階、これを「デジタイゼーション (Digitization)」と呼びます。続いて、業務プロセス全体もデジタル化する段階、これは「デジタライゼーション (Digitalization)」と表現されます。そして、その結果、全社的な影響、ひいては社会全体に影響を及ぼす、この段階がすなわち「デジタル トランスフォーメーション」、DX となります。要するに DX の入り口に至るまでに二段階を経る必要があるということです。
2-3. 「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」、そして「DX」
この DX に至るまでの三段階を説明する例として、よくカメラの進化論が用いられます。まず、フィルム カメラがデジタル カメラに進化した段階が「デジタイゼーション」で、さらに“オンライン上で写真データを送受信する”というプロセスまで含めたデジタル化が「デジタライゼーション」です。その結果、例えば SNS で写真データをシェアする文化や新しいビジネスが生まれていったのは周知のとおりですが、この社会的な影響を生んだフェーズが「DX = デジタル トランスフォーメーション」であると捉えるとわかりやすいでしょう。DX のフェーズになると、ビジネス モデル、ひいては業界そのものが変化します。これが大まかな DX に至るマイルストーンです。
2-4. デジタイゼーションのステップ
まずは皆さんの会社の事業を見渡してみてください。手書きや手作業など、人の手に頼っている作業はありませんか。それはデジタル化できないものでしょうか。その作業を効率化するためのデジタル ツールはありませんか。この数年の間に、多くのデジタル ツールが登場し、進化を遂げて使い勝手が良くなっています。例えば、音声をテキスト化するツールなど、数年前には使い物にならなかったのですが、今では無料で精度の高いアプリがあったりします。“デジタル化できない”などと諦めてはいませんか。まずはアナログ作業をデジタルに置き換える「デジタイゼーション (Digitization)」を試みてください。
2-5. デジタライゼーションのステップ
アナログの作業をデジタル化したら、今度はそのプロセスを見直してみてください。個別にデジタル化を進めても、連携や連動ができなければ発展はありません。例えば、勤怠管理のシステムを導入して、タイムカードをなくしたとします。以前のようにタイムカードの打刻記録を見ながら、電卓で勤務時間の集計をする必要はなくなりましたが、どうせだったら勤怠管理システムと給与計算のシステムが連動していたら、さらに正確に、スピーディに給与計算ができるようになりませんか。あるお客様に対して、どのような時期にどのような商品が売れるのか、そういったデータが蓄積されていたとして、その傾向を分析すれば適正在庫を割り出したり、どのようなタイミングで販促に力を入れるべきか、いわゆる販売戦略や在庫戦略に活かすことができます。これが、業務プロセス全体もデジタル化する段階、これは「デジタライゼーション (Digitalization)」という段階です。ここまで整えて、はじめて本格的な DX に乗り出せるということです。
3. 具体的手順
DX 推進のベース作りのためのステップを理解したところで、DX を進めるために、一体何から、どのような段階を踏んで進めていけば良いのか、順を追って解説したいと思います。
3-1. 経営戦略・ビジョンの提示
DX を進めていくために最も重要なのは、経営トップが DX 推進の強い意志を持つことです。戦略なき DX は必ずと言っていいほど頓挫します。経営層が、“IT のことはわからない”からと、担当者に丸投げしているようでは、必ず現場は混乱します。まずは DX 推進によってどのような価値を生み出すのか、自らのビジネス、経営ビジョンとすり合わせながら設定する必要があります。いわば、社内に向けて、「社内 DX 宣言」を発信するというイメージです。
もちろん、経営者は理解のある旗振り役で良いです。実際には、専属の担当者やチームが必要になるのですが、経営トップが旗振り役となって、常に目的を見失わないように組織全体を引っ張っていくことが重要です。IT 担当に丸投げすると、よくありがちなのが各部門からの抵抗です。各部門の責任者は当然、自らの職務使命を全うしようと行動するので、新しい何かを始めようとする IT 担当とはぶつかりがちです。やはりトップダウンによる DX 推進力は大きく、その後押しが DX 成功には不可欠です。
3-2. 体制整備と適正な IT 投資
DX の目標・ビジョンが明確になったら、社内で DX 化を進めていくための体制を整えます。理想なのは、経営企画部門や情報システム部門はもちろん、先に述べた混乱を回避するために、各部門のキーマンにも参加してもらうことです。できれば経営陣の中から、IT に関する知見を持っている人材を投入し、陣頭指揮を執ってもらうというのも良いかもしれません。しかし、中堅・中小企業においては、人手不足の問題から、なかなか人員を割くのが難しいとは思いますが、どんなに小さくても良いので、専属の部署であったり、専属の担当者を決めると良いでしょう。やはり、専門の担当者を置くことで、会社が本気で DX を進めているのだという姿勢を示すことができます。
もしも人員が不足しているのであれば、データやデジタル技術の活用が得意な人材を採用するのも手です。しかし、中途採用となると、社内事情をキャッチアップするまでに時間がかかりますし、社内のキーマンとの関係構築にも不安があります。理想は、勤務歴の長いベテランや役員と、新たに採用したデジタル担当を組ませることです。お互いの知見を交換しながら進めていくと良いでしょう。
3-3. 現状調査と把握
ビジョンが明確となり、体制が整ったところで、続いて現状の把握を行います。把握すべきポイントは課題です。大きく、業務上の課題の把握とシステム上の課題があります。大きな理想だけを追うのではなく、課題解決し、成果を実感しながら、DX 化の道を歩んでいくのが現実的といえます。まずは、業務上の課題を洗い出して把握してください。会社全体として、部門として、あるいは部門同士の連携に課題がないのか。これは IT やデジタル的な側面に限定せず、業務の流れやフロー上のボトルネックなど、会社の組織全体、事業全体を見渡してみて、そして現場の声にも耳を傾けながら課題を明らかにしてください。
続いてシステムの現状の把握を行います。既存システムのブラック ボックス化は、DX 化への大きな弊害となります。レガシーなシステムは効率が悪いだけではなく、何か障害が発生したときに対処できる人がいなかったり、OS サポートの終了などのリスクにさらされています。サービスを追加するごとにつぎはぎのように増設されたシステムは、思わぬところでエラーが起こったり、それを普及させるにもトラブルの要因が判明しないなど、大きな課題がつきまとうものです。また部署ごとに使っているシステムが異なることも問題です。DX 化を進めていくためには、システムの現状把握は非常に重要となります。
3-4. それぞれの課題に対応
課題が明確になったら、それぞれの課題に対応していきます。一気に進めるのは難しいので、優先順位を決めて取り組むべきでしょう。多くの場合、課題解決に最適な IT ツールの選定・導入からはじめます。課題は何で、それをどうすべきなのか。個別最適ではなく、あくまで全体を見渡しながら最適化するのが DX の本質です。一部分だけ解決しても、それは DX ではなく、その前段階にあたる IT 化にすぎません。もちろん、自分たちだけでは判断できないので、IT ツールを提供するベンダー企業の意見を聞くべきですが、けっしていいなりになってはいけません。ベンダーはどうしても彼らの論理で、自社の製品を採用してもらいたいという心理で提案をしてきます。複数のツールを比較したり、どこのメーカーやベンダーにも属さない、客観的視点を有するコンサルの意見を聞いても良いでしょう。専門家の力を借りるのは必要ですが、決して丸投げではなく、勉強をしながら一緒に選定・導入を行い、自社に IT システムのノウハウを蓄積していくことが重要です。自社の課題を本当に把握しているのは、やはり自社の従業員です。DX 専属の担当社が IT システムの知識を持って判断をできるようになれば、DX 化へのスピードも加速するに違いありません。
IT ツールを導入するところがゴールではありません。それはあくまで DX の入り口に過ぎません。導入後は、実際に運用しながら、本当に目的に近づいているのか? 修正点・改善点はないのか? PDCA サイクルを繰り返しながら、評価見直しを行うことが重要です。
3-5. 日本の企業における DX 課題
一般的には日本の企業において、以下のような DX の課題があるといわれています。まずは、諸外国に比べて「IT リテラシー」が低いという問題があります。いまだに FAX やメールがコミュニケーションの中心な企業も珍しくありません。また日本の商習慣も DX の浸透に歯止めをかけているといわれています。例えば物理的な押印や決裁者に回覧が必要な稟議などの文化を改革する必要があります。さらに属人的な業務が多く、業務に合わせてシステムをカスタマイズしてきたという歴史があります。カスタマイズされたシステムはアップデートや交換が難しいものです。これらの商習慣や文化の壁を乗り越えながら DX を推進する必要がありますが、これらの困難を乗り越えた先には業務効率の向上・コスト削減・組織成長などが待っています。全社的に取り組む価値があることは間違いありません。
4. DX に不可欠な「Microsoft Teams」
4-1. 日本マイクロソフトの取り組み
日本マイクロソフトは、「市場・お客様のデジタル トランスフォーメーション (DX)」に注力。クライアントの変革を支援しています。特に中小企業に対し、「ハイブリッド ワークの推進」「ビジネス プロセスのデジタル化」「スタートアップ企業と連携したインダストリー DX」といった 3 領域における支援を行っています。
4-2. 「Microsoft Teams」の機能
ハイブリッド ワークを推進するうえで不可欠なツールとしてあげられるのが「Microsoft Teams」です。「Microsoft Teams」世界で 1 億 4,500 万人が利用するグループウェアで、その利用者数はここ数年の間、日本の中小企業において 4 倍以上の伸び率で増え続けています。
「Microsoft Teams」にはチャット・通話機能の他、ビデオ会議機能、ファイル共有機能、Office アプリとの連携機能が搭載。スピーディな情報の共有はもちろん、メンバーのスケジュールやタスク管理、ファイル共有などが容易に可能となります。「Microsoft Teams」がよく利用される理由のひとつに、その操作性の高さがあげられます。相手を招待するにはリンクを送るだけ。受ける側もリンクをワンクリックするだけで参加が可能。すぐに会議をスタートできます。「Microsoft Teams」は DX を進める上で必要となる「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」のベースとなりえるツールと言えます。
リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために
リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。
これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。
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