1. 週休 3 日制の導入 (現状と制度)
まずは制度の概要と浸透度など、基本知識を整理していきます。
1-1. 「週休 3 日制」が現実味を増してきた
政府主導で推進されている「働き方改革」。その具体的な施策として、リモートワークやフレックスタイム、時短勤務などの制度導入が推奨され、ワークライフバランスの実現に努める企業が増加しています。
その一環として、現在、各企業で議論が進められているのが「週休 3 日・週 4 日勤務」制度でしょう。「週休 3 日制」とは文字通り、1 週間あたりの労働日数を減らし、休日を 3 日設ける制度。近年、この週休 3 日制を採用する企業が微増しています。
元はといえば、2021 年 4 月、メディアが取り上げたことで「選択的週休 3 日制」が話題になりました。そのきっかけになったのは、政府内で起こった議論。「働き方改革」推進の一環として、働き方の選択肢を増やすという目的がありました。その後、政府の「骨太の方針」に盛り込まれ、各企業に呼びかけるなど、どんどん現実的になっていきました。
当初は前述の通り、ワークライフバランスの実現や、多様な働き方が選択できるというメッセージで推進していましたが、2020 年に起こった新型コロナウイルスの感染拡大防止観点から、この週休 3 日制の導入の検討を開始する企業が増えているようです。
1-2. 現時点における「週休 3 日制」の浸透度は?
果たして、どのくらいの数の企業が「週休3日制」を取り入れているのか。そのヒントとなる調査データがあります。平成 29 年に厚生労働省が実施した「就労条件総合調査」によると、「何らかの週休 2 日制」を採用している企業が 87.2%。そのうち「完全週休 2 日制」を採用している企業が 46.9% に上っていました。
注目したいのは「完全週休 2 日制より休日日数が実質的に多い制度」を採用している企業ですが、なんと 6.0% となっていました。1000 人以上の企業規模で見ると、この割合は 11.1% にのぼります。すなわち、大手企業では、10 社に 1 社以上が「完全週休 2 日制」以上の休日制度を採用していたということです。
また厚生労働省の 2020 年の就労条件総合調査よると、週休を 3 日以上としている企業は 8.3% であり、2010 年の調査結果である 3.9% の 2 倍以上に。このことからも、週休 3 日制を導入する企業が増加傾向にあることがわかります。
実は政府自体も「選択的週休 3 日制」の導入を検討しているようです。この「選択的週休 3 日制」とは、希望者が理由を問わずに週休 3 日制を選択できるというもの。一般的な週休 2 日制度の会社であっても「週休 3 日」という選択が増えることで、ライフスタイルに合わせた働き方が実現できるようになります。
週休 3 日制は、働く人に好影響を与えます。時間的な余裕ができれば、休日を活用して副業ができるようになれます。地方に拠点を置く、多拠点生活もやりやすくなります。子育てや介護に時間を費やすことができます。企業にとっても、もちろんワークライフバランスを実現できる企業として対外的にアピールができます。求職者からの注目が集まり、有能な人材が集めやすくなるかもしれません。もちろん、現在、勤務中の社員にとっても好都合でしょう。モチベーションの維持に役立つのは間違いありません。
1-3. 「週休 3 日」制度を導入している企業
一体、どのような企業が実際に「週休 3 日」制度を導入しているのでしょうか。主な企業をご紹介します。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリング社は、「1 日 10 時間×土日を含む週 4 日の勤務」で週休 2 日制と同様の給与を支給する変形労働制を導入。日本マイクロソフトは、2019 年、2020 年と試験的に選択制の「週休 3 日制」を導入。土日に加え金曜日を休業日としました。その結果、印刷枚数と消費電力量の削減ができたほか、プライベートを充実させる従業員も増えたのだと言います。
ヤフーでは、育児や介護など、サポートが必要な家族がいる従業員を対象に「週休 3 日制」を選べる「えらべる勤務制度」を導入。従業員の申請によって月単位で自分が働く曜日を変更できるだけでなく、週休 2 日制への復帰も自由としています。みずほフィナンシャルグループでは、従業員本人の希望によって週休 3 日・4 日制を選択できる制度を導入。給与は週休 3 日の場合、従来の 8 割、週休 4 日の際は従来の 6 割の仕組みとなっています。リクルートホールディングスは、年間所定労働時間と給与を変えずに年間休日を増加する体制を採用。週に換算すると週休約 3 日になります。
上記の具体的制度を見てもわかるように、「週休 3 日制」と一言でいっても、様々なスタイルがあります。例えば、労働時間を削ることで基本給も減少するパターンや、労働時間も給与もそのままで、1 日の労働時間を増やすことで、給与は変えずに休日を増やすというパターン。そして労働時間は減らし、給与はそのままというパターンがありますが、これは生産性向上とセットで実施するのが望ましいようです。