働き方改革による Web 会議の効率的な進め方は?
2021 年 6 月 30 日
新型コロナ感染防止の観点と、数年前から国が推進している “働き方改革” の流れにも後押しされてすっかり浸透した感のあるリモートワーク。その中心に据えられているのが、数人のメンバーがネットワークを介して集う Web 会議でしょう。本コラムでは、Web 会議の実態、および課題とその解決法について考えていきたいと思います。
1. 世の中の Web 会議はうまくいっているのか?
まずは、Web会議の実施状況から把握しておきたいと思います。
1-1. リモートワークの実施概況
リモートワーク全般に関する公的な調査データは存在しますが、残念ながら Web 会議だけにフォーカスしたものはありません。しかし、民間の調査会社や HR 企業、大手事務機器メーカーが数百人単位を対象とした調査を行っているデータは存在していますので、これらの結果を紐解きながら傾向を分析したいと思います。
Web 会議の普及は、元々、コロナ禍以前、リモートワーク導入以前から、各企業の中で「業務効率アップ」「経費削減」という文脈により進められていました。大手企業では、本支社間の会議で TV 電話を活用したり、出張先からミーティングに参加するという例も数多くあったように思います。全体から見たら、とても緩やかに浸透をしていったように思いますが、それが 2020 年に急襲したコロナ禍によって、加速せざるを得なくなりました。緊急事態宣言以降、リモートワークが推奨され、リモートワークが可能なミーティング、商談、会議類はすべてWeb上で実施されるスタイルへと移行しました。
ある事務機器メーカーの調査によれば、コロナ感染拡大前後で Web 会議の頻度が高まったと感じる人が実に 9 割にも上っていました。このことから、Web 会議は昨年の時点ですでに、リモートワークの代名詞のような存在になっていたことがわかります。特に、リモートワーク初期は、十分な準備や制度設計も進んでいなかったため、多くの企業がすでに活用していたツールを頼りに、コミュニケーションを図りながら進めていたことが推測されます。
別な調査によると、2020 年に入ってから急激に「Web 会議」に特化したツールを導入する企業が増えたことがわかります。2019 年 12 月末時点では、その利用率は 44% だったのですが、2020 年 4 月末には 63% に上昇しています。
「Web 会議システム」導入の目的は、もちろん「リモートワーク環境の整備」であったり、リモートワークへの移行に伴い不足しがちだった社内ミーティング・コミュニケーションの向上、そして極力、対面ミーティング数を減らしたいという意図もあったようです。それは社内だけでなく、取引先や顧客との対面も同様です。
「Web 会議システム」導入は、新型コロナ感染は恐れつつ、面談が必要と考えられる相手に対して、電話ではなく顔を見ながら話したいという意識の表れともいえます。新型コロナが蔓延する中、急激にリモートワーク環境を整えなくてはならなくなり、既存の仕事環境と同様のものを用意しようという意図により導入されたことがわかります。
2. Web 会議の課題
2020 年に急激に浸透し、2021 年に入ってからスタンダードな存在になりつつある Web 会議ですが、参加者は果たしてどのような課題を感じているのでしょうか。
2-1. 通信環境、機器 (マイク、カメラ)
Web 会議を経験した人なら、まず思い当たるのがこの通信環境、機器に関する課題です。特に Web 会議に移行し始めた頃は、Web 会議に参加する誰か一人が必ずと言っていいほど、不十分な通信環境や機器スペックによるトラブルを引き起こしていたように思えます。
症状としては「画像や音声が途切れる」「話している途中で画面がフリーズする」「画面共有をした途端に画面が動かなくなる」などの問題が発生し、Web 会議にストレスを感じていた人も少なくはありません。社内の人との会議であればまだしも、外部の人との会議では、この手のトラブルによって相手を不愉快にさせることはあまり望ましくはありません。
これらのトラブルの多くが通信回線やルーター、カメラやマイクなどの機器のスペックの問題によって引き起こされます。要するに、古い機器を使っていたり、通信速度が遅い回線を使用しているということです。職場で最新のスペックのパソコンを使っている人でも、自宅でほとんど仕事をしないのであれば、それほど高スペックの機器をそろえる必要がないので仕方がないことです。2020 年に最新のパソコンが飛ぶように売れたといいますが、このような課題が背景にあることは間違いありません。
2-2. 自宅のワークスペース
急に自宅で仕事をするとなっても、すぐに専用のワークスペースを確保できるわけではありません。共働きであれば、夫婦そろってリモートワークになるかもしれません。それぞれノートパソコンを持っていればいいのですが、二人同時に Web 会議が入ったとしたら、お互いの声などが気になってしまいます。
小さなお子さんがいる家庭では、例え専用のワークスペースがあったとしても、Web 会議の途中で可愛い姿が映り込んでしまったり、お父さんやお母さんと遊びたいという一心で、話しかけてくることもあります。あるいはペットのワンちゃんが吠えたり、甘えてきたり…。リモートワーク初期の頃は、このような可愛いトラブルが多発していました。
こういったトラブルを回避したいと思っても、住宅事情によってはどうにもならないケースがありますが、最近は家庭内でルールを定めたり、パーテーションのようなもので、簡易的なワークスペースを確保できる商品も発売されているようです。
また、Web カメラに映りこむ背景を気にする方も多いようです。確かに、室内に干してある洗濯物や家族の写真などが映りこんでいるのは、プライバシーの観点からもあまり好ましくないように思えます。参加者も気になって仕方がありません。多くの Web 会議ツールでは、自分の姿がどのように相手の目に映っているかが確認できるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
2-3. 空気が読めない、表情が読めない
Web 会議上で感じる課題として、多く聞かれるのが「相手の真意が読み取りづらい」「ちょっとした確認や意思疎通にも手間がかかる」という声ではないでしょうか。リアルな会議とは違って、直接顔を合わせるわけではなく、モニター越しでは参加者の表情や態度が読み取りづらいのでしょう。
また、参加者の住宅事情よっては、すぐ近くにご家族がいるかもしれず、会社での顔とご家庭での顔の使い分けに苦慮しているのかもしれません。出社している時のキャラクターとは微妙に違っていて戸惑うケースもあるようです。
相手の顔色が読めないと本音が見づらく、意図を違って捉えがちです。スタートラインが違うと当然、成果物に対しても “思ったようなものが出てこなかった” “私の意図を汲んでいない” という話になり、以前よりも手戻りが多くなったという話も聞きます。思った以上に、私たち日本人は会議の場で相手の表情を読み取ろうとしていたことが改めてわかります。
3. 課題解決術
Web 会議の回数とともに、課題を解決しようという工夫も重なっていきます。皆さんは、どのような課題解決策を講じているのでしょうか。
3-1. まずは機器を整える
根本的な課題である機器に関しては、最低限のスペック確保は必須です。これまではご家庭用として、あまり気にならなかった課題も、実際にリモートワークを実施して浮き彫りになったと思います。いきなりハイスペックな機器を取りそろえる必要はありませんが、Web 会議で通常のコミュニケーションが取れるレベルには持っていきたいものです。
Web 会議でネックになるのは、ノイズが多かったり、映像や音声の遅延です。まず、通信回線ですが、可能であれば有線 LAN を使用することが望ましいです。Wi-Fi であればルータを刷新し、ご家庭の広さに合わせたスペックを確保したいものです。
意外と気になるのが、タイプ音です。Web 会議中に PC でメモを取る人も多いかと思いますが、パソコンに内蔵されているマイクではタイプ音を拾ってしまいますので、別途単独のマイクを用意するのが理想です。マイクも無線と有線タイプがありますが、電波の干渉が少ない後者がお勧めです。
Web カメラについては画質やスペックよりもカメラの設置位置への配慮が重要です。標準搭載のカメラでは、顔を下から見上げる画角になります。照明器具や窓の位置によって顔が見えづらくなるので注意が必要です。
自宅のプライベート空間を映り込ませたくないと思う人も多いかと思いますので、そんなときは、Web 会議ツールに搭載されているバーチャル背景を利用するとよいでしょう。いくつかの背景が用意されていますし、もちろん自分でカスタマイズも可能です。外部の方との面談であれば、QR コードから名刺管理アプリに飛ばしたり、自分のメールアドレスを読み込ませるなどの仕掛けも可能です。
Microsoft Teams でも、バーチャル背景は簡単に設定できます。
また、専用の Web サイトでは非常の多くのバーチャル背景が用意されています。
バーチャル背景を自分好みに変更することで、他の参加者から注目されたり、アイスブレイクとして利用したり、自分の気持ちを高く保つために利用したりなど様々な楽しみが生まれるのではないでしょうか。
3-2. 参加者の心得
参加者も Web 会議ならではの配慮が必要です。積極的に参画することで会議は円滑なものとなります。当事者意識を持って臨むべきでしょう。重要なのは相手の話を聞く態度です。相手の目に自分の姿がどう映っているか、それはリアルな会議と違って、Web 会議であれば自分の姿をモニターで確認することができます。しっかり自分が相手の話を聞いているということを態度で示すことで、発言者も話しやすくなります。
また、Web 会議ではリアル以上にわかりやすく簡潔に、そして論理的に話すことが求められます。ゆっくりわかりやすく、滑舌よく話すように心がけてください。決して早口でまくしたてるような話し方は NG。参加前にしっかり話の論点を整理して臨むのが理想です。移動時間がなく、手軽にはじめられることで立て続けに予定を入れがちですが、事前準備や事後のまとめの時間を設けることで、生産性の高い Web 会議を実施することが可能となります。
3-3. 進行役 (ファシリテーター) の役割
Web 会議のスムーズな進行には、「ファシリテーター」の存在が必要不可欠です。参加者の表情を見ながら発言を促し、全体進行をコーディネートします。もちろんタイムキープも必要です。意見をわかりやすくまとめたり、脱線した話の軌道修正も行います。
第三者目線で参加する冷静な目と、すべての発言の真意を聞き取り、発言者の意思を尊重しながら会議を進めます。とにかく、全員に当事者意識をもたせることが重要で、全員にバランスよく話を振りながら、意義ある会議にする重要な役目を担っています。
3-4. 発言ルール
Web 会議のスムーズな進行にはルール作りが必須です。特に発言するタイミングを見計らうのが難しく、発言者が話している時に割って入ると、リアル会議以上に声が聴こえなくなってしまいます。一般的なルールとしては、「発表者が一通りの発表を終えるまで待つ」「質問者は挙手してから発言する」「質問はチャットツールで受け付ける」というものがあげられます。会議開始前に、ファシリテーターのほうからルールを伝え、しっかりマネジメントすることでスムーズな会議が実現します。
4. 雑談時間の必要性
Web 会議普及事前から重要視されていたのが雑談です。雑談は部下のコンディションを推し量ったり、抱えている課題を解決する糸口になるだけでなく、そこから斬新なアイデアが生まれ、ビジネスにつながる可能性があります。しかし多くのビジネス パーソンが、リモートワークに移行し Web 会議が主流になったことで雑談時間が減った、もしくはなくなってしまったと感じているようです。企業によってはあえて Web 上で雑談時間を設け、自由闊達な意見交換を促しているケースもあるようです。根底にあるのは自由で円滑なコミュニケーションです。誰もが話しやすい雰囲気を作れば、あえて雑談時間を作る必要はありませんが、少し気持ちに余裕を持って Web 会議に臨むような雰囲気づくりは必要です。
5. ワンランク上の Web 会議
Web 会議は決してコロナ対策のために設定されたものでなく、参加者がシームレスにつながりながら、自由に発言を行うことで、新しいビジネス価値を生む場です。
採用面接を Web 会議で行っている企業も多くなりました。これまでは出会うことのなかった優秀な内定者を選出することができているとい話も耳にします。取引先との打ち合わせをすべてオンラインで実施する企業もあります。飛躍的に生産性がアップしています。これらの事実を見ても、Web 会議を上手に活用することがこれからのビジネスを切り拓くカギになることは間違いなさそうです。
リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために
リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。
これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。
- Microsoft 365・Excel: Microsoft 365 から、Excel の使い方など生産性を向上させるコラム
- Teams・Web 会議: Microsoft Teams を始め、Web 会議をワンランクアップさせるコラム
- リモートワーク・テレワーク: リモートワークやテレワークなど、新しい働き方のお役立ちコラム
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