1. クラウド セキュリティとは
クラウド セキュリティとは、クラウド環境でのリスクに対するセキュリティ対策を指します。クラウド環境でのリスクは、クラウドに保管されている重要なデータの漏えいや消失、これらのデータを狙ったサイバー攻撃や不正アクセスなどさまざまです。昨今の働き方の多様化に伴い、場所を問わず利用できるクラウド サービスを活用する企業が増えています。
クラウド サービス内のデータは、基本的にクラウド サービスを提供する事業者のサーバーに保管されており、ユーザーはインター ネットを介してこれらのデータにアクセスします。場所を問わずデータにアクセスできるメリットがある一方で、第三者がこれらのデータへ不正にアクセスするリスクも高まっているのが現状です。不正アクセスによる情報漏えいや改ざんなどの被害を抑えるために、クラウド セキュリティの重要性が高まっています。
1-1 クラウド サービスのメリット、デメリット
クラウド サービスの導入によって、企業はさまざまなメリットを享受できます。最大のメリットは、インターネットに接続できれば、場所を問わずにサービスを利用できる点です。自社内でインフラ環境やソフトウェアを利用できる環境を構築する手間がなく、スピーディーかつ簡単に導入できます。さらに、メンテナンス作業などはクラウド サービスを提供している事業者が行うため、運用に自社のリソースを割く必要がありません。セキュリティ管理者の負担も大きく軽減できるでしょう。
メリットの多いクラウド サービスですが、デメリットもいくつか存在します。クラウド サービスは使用できる機能や UI などが決まっているため、自社の希望に合わせて自由にカスタマイズはできません。カスタマイズできても、制限が設けられているケースが大半です。
また、クラウド サービスを提供している事業者によって、セキュリティ レベルも異なります。仮に事業者のセキュリティ対策が不十分な場合、サイバー攻撃の被害に遭ったり、セキュリティ事故が起こったりするリスクが高まるでしょう。自社でのセキュリティ ポリシーの統一も難しくなります。安全にサービスを利用するためには、十分なセキュリティ対策を実施しているクラウド サービスを選定することが重要です。
1-2. クラウド サービスの種類
クラウド サービスの種類は大きく分けて、SaaS・PaaS・IaaS の 3 つです。
SaaS (Software as a Service)
SaaS (サース) とは、インターネット経由でクラウド上のソフトウェアやアプリケーションを利用できるサービスです。代表的な SaaS のサービスとして、Microsoft Word や Microsoft Excel などのオフィス ソフトが使える「Microsoft Office 365」や、「Gmail」 「Google マップ」などが挙げられます。SaaS は、従来パソコンに入れて使用していたソフトウェアを、ブラウザーなどから利用できる点が特徴です。ソフトウェアを購入したり、インストールしたりする手間がなく、インターネット環境さえあればどこからでもサービスを利用できます。
PaaS (Platform as a Service)
PaaS (パース) とは、クラウドにあるプラット フォームを利用できるサービスです。たとえば、Amazon が提供している「Amazon RDS」や、マイクロソフトが提供している「Microsoft Azure Database」などがあります。PaaS は、アプリケーションを作動させるためのハードウェアや OS などを一式利用できる点が特徴です。そのため、システムの開発環境を構築する手間がかかりません。
このように、PaaS は開発環境を提供するため、開発者にとってはメリットの大きいサービスと言えるでしょう。通常の開発作業では、アプリケーションごとに開発環境の構築が必要ですが、PaaS を利用すればアプリケーションの開発作業のみに注力できます。ただし、利用できる開発言語やデータベースは事業者が提供しているものに限定されるため、開発環境を構築する際の自由度やカスタマイズ性は低くなります。
IaaS (Infrastructure as a Service)
IaaS とは、インターネット経由でネットワークやサーバー (CPU、メモリ、ストレージ) などのインフラ環境を構築できるサービスです。たとえば、Amazon が提供している「Amazon EC2」や、マイクロソフトが提供している「Windows Virtual Machines」などが挙げられます。IaaS では、サーバーの選定や OS、メモリ容量などのシステムを自由に構築可能です。自社に適したインフラ環境を構築できるでしょう。ただし、IaaS 導入後の運用に関しては、自社内で対応しなければなりません。OS のインストールやシステムの更新、メンテナンス作業などの運用および管理に適切に対応するためにも、専門知識のある人材の確保が必須です。
また、SaaS、PaaS、IaaS などのクラウド サービスは、ユーザーとサービス提供事業者の責任範囲を明確にした「責任共有モデル」を定めています。より事業者側の責任が広範囲となる責任共有モデルを採用することで、ユーザー側の管理負担が軽減され、クラウド全体の情報セキュリティを強化できます。
1-3. クラウド サービスとオンプレミスとのセキュリティ比較
オンプレミスとは、自社でサーバーやソフトウェアなどを管理および利用するシステムです。昨今のテレワークの普及に伴い、クラウド サービスを採用する企業が増加していますが、社内で運用するオンプレミスと比較してセキュリティ面やセキュリティ リスクに違いはあるのか、気になる方も多いでしょう。
クラウド サービスのセキュリティ レベルは、サービス提供事業者によって常に一定以上のセキュリティが担保されているケースが大半であり、セキュリティ管理の負担も大きくありません。一方、オンプレミスのセキュリティ レベルは、自社のセキュリティ ポリシー次第でどこまでも高められるのが特徴です。ただし、自社で脆弱性を修正するためのパッチ適用やバージョンアップなどを行う必要があり、セキュリティ管理者の負担は大きくなるでしょう。
また、クラウド サービスの場合、データの送受信がインターネット経由で行われるため、セキュリティ面でのリスクが懸念されています。どの場所からでも利用できる分、第三者からねらわれるリスクも高まります。社内に設置しているオンプレミスの場合は、ローカル環境でシステムの構築や運用を安心して行える点がメリットです。このように、クラウド サービスとオンプレミスのセキュリティに関しては、それぞれメリットとデメリットがあります。クラウド サービスを導入する際には、セキュリティ レベルの高さや、自社のセキュリティ要件を満たしているかを確認しましょう。